名前を奪われた少女は、妖神と共に誓いを抱いて歩む。ー名喪ノ帳帖ー

それだけ伝えた想来は、「滋養のあるものを持ってきます」と、その場を離れた。

「さて、蓮花。先のはなんだったのだろうか」

碧嶺は、真剣な眼差しで、蓮花に尋ねた。

「えっと……」

蓮花は、自分でも分からなかったことを告げた上で、話し始めた。あの時は、悲しくて、つらくて、何もできない自分自身の不甲斐なさに、嘆いていたこと。

でも、霜霞国の王城で、唯一優しく接してくれていた凛音さんが、もう手の施しようがないくらいの怪我を負い、衰弱していく姿を見届けることしかできないことを考えたら苦しかったこと。自分に言い聞かせるように、だけど、彼女が治る奇跡を願ったことで、あの力が発現したこと。

蓮花自身がなぜこのような力が発現したのか、驚きで今でも信じられないと碧嶺に伝える。

「でも、凛音さんが治って、本当に良かったぁ」

思い出したら、また涙が目に溜まっていく。そんな蓮花の涙を、碧嶺が優しく拭ってくれた。

「蓮花の力は、久惔に近いものを感じる。色は違えど、炎だから。久惔の炎には、時間をかければ治る傷を癒す力があるのみで、生死を覆すほどの力はないが、何か知っているかもしれない」

「はい。ありがとうございます」

碧嶺の言葉に、蓮花は頷いた。

そして、久惔が天閣にやって来た。