名前を奪われた少女は、妖神と共に誓いを抱いて歩む。ー名喪ノ帳帖ー

蓮花は、自分自身に言い聞かせるような切なる祈りを捧げた。すると、突如として彼女の体から、淡い青い炎が立ち上った。蓮花の手から、その青い炎が、凛音へと移っていく。そして、炎は二人を包み込んだ。

一瞬の出来事が目の前で起きた碧嶺は、慌てて炎の中にいる二人を助けようと、手を伸ばし、踏み込んだ。しかし、何とも不思議で、その炎は熱くはなかった。むしろ、ひんやりと冷たくて、なのに陽だまりのような心地よい温かみもある。その炎は、碧嶺も包み込んだ。

さらに驚くことに、その炎は、凛音の傷を瞬く間に癒していった。傷は跡形もなく消え去り、凛音と蓮花、碧嶺の3人は、安堵と驚きの入り混じった表情で、その不思議な光景を見つめていた。

「え……治った……?」

凛音は、自身の手に巻かれていた白い布を取り除き、拳を握ったり開いたりしながら、動きを確かめる。蓮花から見ても、碧嶺から見ても、凛音は完全に回復しているようだった。

「身体に異常がないか確認しなければなりません。しばらくは横になっていてください。そして蓮花、こちらへ」

蓮花は碧嶺に呼ばれ、凛音のいる部屋から出た。呼ばれた想来が凛音さんの部屋に入り、しばらくして出てくる。

「何が起きたのか解りかねますが、治ったと判断してよいでしょう」