名前を奪われた少女は、妖神と共に誓いを抱いて歩む。ー名喪ノ帳帖ー

「想来。状況は?」

碧嶺が声をかけると、想来と呼ばれた侍奉が、手早く状況を説明した。

「はい、碧嶺さま。島人のほとんどが軽傷です。ただ、一名の島人が重傷を負っている状態です」

「そうか……。では、重傷者は僕が看ることにしよう。軽傷者の手当てを、引き続き頼む」

「はい。承知いたしました」

「重傷者はこちらです」と、想来が碧嶺を案内する。蓮花は、自分がお借りしている自室へ戻らず、碧嶺の後ろをついて歩いた。重傷者の世話を蓮花も手伝おうと思ったからだった。

サクとして、そして蓮花として、変わらず接してくれた島の人々。彼らの温かさに、蓮花は何かしたいと強く思っていた。できることは限られているかもしれないけれど、何もしないわけにはいかない。

「こちらです」

「ありがとう、想来。後から蒼翼と雲覇が、霜霞国から自ら脱した人たちを連れてやってくる。3人で協力しながら、食べる物などを配給してあげてほしい」

「承知いたしました。それでは、失礼いたします」

想来が離れた後、蓮花と碧嶺は、案内された部屋の扉を開けて入った。ベッドに横になっていたのは、元王城勤めの使用人である、凛音だった。

蓮花に霜霞国で唯一優しく接してくれていた彼女が、今や見るも痛々しい姿でベッドに横たわっていた。凛音の顔は青ざめ、息をすることさえもしんどそうだった。

「凛音さん……!」