名前を奪われた少女は、妖神と共に誓いを抱いて歩む。ー名喪ノ帳帖ー



碧嶺は、蓮花のそばまで降りてきて、そう説明した。
しかしその視線は蓮花を見ることはない。

「みんなは無事ですか?」

蓮花は、息を切らしながら尋ねた。

「今のところ、怪我をしたものは何人かいるが、命に別状はないと聞いている」

「よかったぁ」

蓮花は、張り詰めていた気が抜けて、その場に座り込んだ。
蓮花は、張り詰めていた気が抜けてその場に座り込んだものの、すぐさま立ち上がった。

「碧嶺さん、霜霞国の門を自ら超えてきた人たちがいて」

「ああ、久惔から話は聞いているよ。蒼翼と雲覇を向かわせたから問題ない。後で来るはずだから、先に蓮花も天閣に向かおう」

「はい」

蓮花が頷くと、碧嶺は少し申し訳なさそうに言った。

「緊急事態だから許してくれるね?」

そう言うと、ふわりと蓮花を抱え上げた。蓮花は恥ずかしかったが、そうも言っていられない状況なのは分かっていた。今度こそ落っこちないように碧嶺にしっかりと掴まる。こんな非常時でしかも言い合いをしてしまった後なのにも関わらず、心拍数が上がっていく。どうか心音だけが聞こえないようにと願いながら、天閣へ戻ると、蒼翼と雲覇とは別の侍奉が、忙しそうに走り回っていた。