名前を奪われた少女は、妖神と共に誓いを抱いて歩む。ー名喪ノ帳帖ー

どうしても壊すことができなかった人々のことは、後ろ髪を引かれる思いがあったが、必ず助けに来るから、と約束した。

牢から抜け出した蓮花たちは、いつ気づかれるかわからない中、必死で逃げた。だが、幸いにも誰一人として欠けることなく、脱出に成功した。蓮花とともに逃げ出した人々は、各々の家へと帰っていく。

蓮花は、一人、一心不乱に走り続け、門の近くまでたどり着いた。門兵の姿はない。試行錯誤しながら、重い扉を開き、その身を投げ込んだ。

その頃、王族は、牢から出た人々のことなど気にも留めず、この天地変動の気を紛らわすための宴を催していた。

3度目は、空から降り注ぐ冷たい砂塵だった。それは、命あるものの活力を奪うかのように、植物の葉を枯らし、人々の喉を焼いた。井戸水は濁り、ひび割れた大地はさらに乾き、飢餓と疫病の予兆が国を覆い始めた。家には、地揺れでひび割れた隙間から、砂が掃いても掃いても入ってくる。

それでも、王城は頑なに城門を閉じ、外の惨状から目を背け続けた。王族の耳には、民衆の悲鳴は届かない。彼らは、ただ宴に興じ、この異変を、自分たちとは関係のない、取るに足らない出来事だと考えていた。

しかし、その中でただ一つの地域だけが、その警告に耳を傾けた。