宵の月、秘めたる契り―帝に愛された二人の女御―

頬を赤らめ、戸惑いながらも礼を失さぬ佇まい。

装いこそ簡素だが、その奥にひそむ気品と奥ゆかしさに、心が惹かれていた。

恥じらうその姿までもが、かえって姫君たちにはない可憐さをまとっていた。

帝の胸には、初めての静かな衝動が湧いていた。

――この女を、もっと知りたい。

それを最初に悟ったのは、高頼の方だった。

帝の目が、綾子の後ろ姿を追っていたことに気づいた瞬間、友としての勘が働いた。

「綾子、時間はあるか?」

「えっ……はい。」

戸惑いながらも頷いた綾子に、高頼はごく自然な声で続けた。

「どうだ? 帝の話し相手になっては。」

その提案に、綾子はわずかに目を見開き、すぐにうつむいた。

「……私では務まりません。」

静かにそう告げると、深く頭を下げ、背筋を正したままその場を去っていった。

紅の袴が月明かりの下で揺れ、やがて御簾の向こうへ消えていく。