宵の月、秘めたる契り―帝に愛された二人の女御―

控えめながら、芯のある瞳。艶やかな黒髪に、凛とした美しさが漂う。

装いは質素だが、そこには姫君たちにはない落ち着きと静けさがあった。

胸の内に、何かがふと灯ったのを、帝は確かに感じていた。

「帝、これは親戚の綾子です。」

高頼がそう紹介すると、綾子の瞳が驚きに見開かれた。

「……帝?」

「ああ、この前、即位されたばかりの。」

そう答える高頼の声を聞いた瞬間、綾子はまるで焔に触れたように顔を赤らめた。

そして、自らの姿が打掛も羽織らぬ袴姿であることに気づいたのだろう、咄嗟に高頼の背後へと身を隠した。

「申し訳ございません……わたくし、無礼な姿で……」

声は小さく、けれどその震えは真摯だった。

帝・彰親は、柔らかく目を細め、口許にほのかな笑みを浮かべる。

「いや、仕方あるまい。高頼が不意に呼んだのだから。」

そう言いながらも、帝の目は隠れた綾子の肩先にそっと注がれていた。