宵の月、秘めたる契り―帝に愛された二人の女御―

「……ん? あれは……」

目を張る高頼に、帝が視線を移す。

「知り合いです」

それは、帝が運命の扉に触れた瞬間だった。

「綾子。」

高頼は、そっと声をかけた。

その声に振り向いた女は、ぱっと表情を和らげる。

「高頼様。」

懐かしさと喜びを滲ませて、袴姿のまま軽やかに歩み寄ってくる。

打掛も着ず、飾り気のない姿。

それでもその立ち居振る舞いには品があり、気安くも決して軽くはない。

「お久しぶりですわ。」

「……ああ、元気にしていたか?」

まるで歳の離れた兄妹のような、親しげな口ぶりだった。互いの間に、かつての穏やかな日々が確かにあったことが伺える。

帝・彰親は、その様子をじっと見つめていたが、ふと笑みを浮かべて言った。

「高頼、知り合いなら、朕にも紹介しろ。」

そう言って綾子へと向き直った瞬間、その面差しに、帝の目が吸い寄せられた。