宵の月、秘めたる契り―帝に愛された二人の女御―

しばらくして、帝・彰親はふと立ち上がった。

「少し、夜風に当たってくる。」

それを聞いた源 高頼もすぐに膝を正す。

「お供します。」

二人は祝宴の賑わいを背に、静けさ漂う御苑へと歩を進めた。

月の光が庭石を照らし、虫の声が幽かに響いていた。

やがて、沼にかかる朱塗りの橋にたどり着く。

「夜風が心地よいな。」

「はい。熱のこもった広間より、ずっと清々しい。」

二人はゆるゆると橋を渡る。渡り終えたその先で、帝の足がふと止まった。

池のほとり、灯の落ちた小径の先に、一人の女が見えた。

袴姿で、打掛も着ず、几帳の奥から酒の瓶を抱えて現れたその女は、身分高き者ではないはずだ。

それでも、その所作は妙に目を引いた。

「……あれは?」

帝が問えば、高頼が目を細めた。

「ああ、どこかの女房でしょう。」

そう答えかけて、次の瞬間には表情を変える。