帝の友人、源 高頼は、即位を祝う盛大な宴の中で、ただ一人、帝の隣席を許された。

帝との近しさを示すその配置に、周囲の貴族たちは密かに舌を巻いた。

杯を交わしながら、高頼が帝の耳元で囁く。

「帝。あれに控えるは、皆、今宵のために用意された姫君達ですよ。」

几帳の奥、しとやかに並ぶ数人の姫たち。

その姿は皆、美しく着飾り、扇を掲げて笑みを浮かべていた。

だが帝――彰親(あきちか)は、さも興味なさげに杯を口に運ぶ。

「どれも、一緒にしか見えん。」

そう言った目は、どこか虚ろで、杯の向こうに何かを探しているようだった。

高頼は苦笑する。

「そういうものですよ、姫君なんて。髪を黒々と整えて、装束を重ねても、結局は家の飾りにすぎませんからな。」

彰親は黙して応えず、ただ杯を傾けた。