宵の月、秘めたる契り―帝に愛された二人の女御―

帝が静かに問いかけると、綾子は目を伏せ、ほんの少しだけ肩を震わせた。

「……帝に召されるのは、今夜が最後です。」

その一言に、帝の胸が締めつけられる。

衝動のままに彼女を引き寄せた腕を、思わず緩めた。

「そんなことはない。」

苦しげに言う帝の声に、綾子は小さく微笑む。

けれど、その笑みは慰めにも似ていた。

「帝のお気持ちは、もう……よく分かりました。でも、私は身分が低く、入内など叶いません。誰も、それを許さぬでしょう。」

帝は強く唇を噛んだ。

指先に力が入り、膝の上の袴を握る。

「父が無官でも、関係ないではないか。」

その言葉には、帝の矜持ではなく、一人の男としての悔しさが滲んでいた。

この手に抱きたいと思った女が、国の仕組みによって遠ざかっていくこと――それが、これほど苦しいとは思わなかった。

彼女の心が自分に向いていると分かっていても、尚、届かぬものがあるという現実に、帝は初めて打ちのめされていた。