宵の月、秘めたる契り―帝に愛された二人の女御―

それはただの召しではない。

政でも、義務でもない。

帝としてではなく、一人の男として願い、待ち焦がれた夜――

帝はわずかに背筋を伸ばし、深く息を吐いた。

その指先はわずかに震えていたが、心は確かに彼女を迎える覚悟をしていた。

やがて、御簾の向こうから、やさしい衣擦れの音が近づいてくる。

帝は目を閉じた。

――綾子が来る。

その事実だけで、胸が満たされていくのを感じていた。

「帝、綾子でございます。」

柔らかな声とともに、静かに御簾が上がった。

その向こうから現れた綾子は、先日とは打って変わり、見事な打掛を纏っていた。

深い紅に金糸が織られ、まるで夜桜が月明かりに咲き誇るような美しさ。

その姿に、帝・彰親の目は自然と奪われた。

視線を逸らすことも、言葉を発することも、しばし忘れていた。

「……よく来てくれた。」

そう言おうとして杯を取ったが、指がわずかに震え、うまく持ち上がらなかった。