宵の月、秘めたる契り―帝に愛された二人の女御―

「綾子を所望と……聞き及んでおります。」

静かに、けれど明確な口調で語る男に、彰雅帝は頷いた。

「ああ。ぜひ、お願いしたい。」

だが男は顔を伏せ、両の手を膝の上に重ねたまま、しばらく口を閉ざしていた。

「……もし綾子を入内させても、私は……後ろ盾にはなれません。」

帝は一瞬、表情を曇らせる。

「それは、諦めろというのか。」

問い詰める声に、綾子の父は深く頭を下げる。それが、肯定なのか謝罪なのか、判然としない。

「……ただ一度、会わせてはくれないか。朕の言葉を、直接綾子に伝えたい。」

そう願い出た帝に、男は何も答えられなかった。ただ、再び額を畳に擦りつけるようにして謝り続ける。

「……申し訳……申し訳ございませぬ……」

帝の胸に、重く渦巻くものが残った。

それは、望むものに手を伸ばせぬ、帝としての不自由さ。

そして同時に――この想いが、すでに“欲”ではなく、“恋”に変わりつつあることを、自覚した瞬間でもあった。