宵の月、秘めたる契り―帝に愛された二人の女御―

帝は低く息を吐き、月の光に照らされた庭を見やった。

「難儀なことだな。」

だがその次の瞬間、ふと帝の目に、わずかな光が差した。

――ならばこそ、今が好機かもしれぬ。

綾子を手に入れるなら、誰も争わぬ今しかない。

その思いに突き動かされるように、帝は言った。

「……改めて綾子を召したい」

高頼は目を伏せ、しばし黙考したのち、小さくうなずく。

「……難しいことですよ。帝が身分の低い女を入内させるのは。必ず周囲から声が上がります。」

だが帝は、その言葉にひるむことなく言い切った。

「先の右大臣の末娘だろう。それなら、さほど異論も出まい。朕の想いの前では、小さなことだ。」

その声音には、帝としてではなく、一人の男としての情熱がにじんでいた。

数日後、宮中の静けさを破るように、綾子の父が御所を訪れた。

先の右大臣――かつては栄華を極めた男も、今はその威光の面影を残すのみ。

髪には白髪が混じり、背はかすかに丸くなっていた。