宵の月、秘めたる契り―帝に愛された二人の女御―

「……お願いしたい」

「分かりました。」

高頼はすぐに立ち上がり、御所の奥へと消えていった。綾子のもとへ向かったのだろう。

帝は一人、再び杯を手にしながら考える。

――本当に、来てくれるだろうか。

名を名乗ったのだ。ましてや、自分は帝。

来ることを拒む理由はないはず……だが、綾子という女は、どこか他の姫たちとは違っていた。

命じて召すことはたやすい。

だが、綾子の心が、自分のもとに来るのかどうか――

それが、妙に気がかりだった。

やがて戻ってきた高頼の顔には、どこか気まずそうな色が浮かんでいた。帝の隣に戻ると、そっと膝をつき、頭を下げる。

「……申し訳ありません。綾子が、気が進まないと。」

帝は驚いたように目を細めたが、すぐに口元を緩めた。

「そうか。……やはり、通っている男でもいたか。」

帝としての威厳を保ちながらも、わずかに肩が落ちたように見えた。

だが高頼は、すぐに首を振った。