◆◆◆

 バッドエンドが港区の人口並に多いと言われる乙女ゲー『マフィアクター』。
 その最難関キャラである紅龍様(最推し♥)を落とす為、私は他の攻略キャラから殺されないようにしつつ、ストーリーを進めなければならないという難しいポジションにいる。

 私は紅龍様(の金)の力でリフォームされてキレイになったキッチンで料理の本を読むふりをして、今後について考えていた。

 「まぁ、ガルー達が成長したら聖女ユリが登場して何か上手いことして彼らと逆ハーレムエンドとかしてくれると思うんだけど、問題はそれまでに私がガルー達から殺されないように立ち回ることよね~」

 ちなみにマフィアクターはR18なのでエロシーンがあるのだけど、ガルー、サングレ、アリアとユリの4Pは凄かったなぁ~……。(←ただし、4P展開を見てしまうと、嫉妬深い紅龍様を絶対に落とせなくなるので注意!)

 「ガルーがオラオラ攻めする中、サングレはねちっこく責めるのよね~。アリアはベッドの上では猛獣となり……って、いつも野良猫みたいなものか、あの子は」

 反芻していると、キッチンの扉が開いた。
 サングレが頭に落ち葉をつけた姿でホウキとチリトリを持って入ってくる。

 「シスター! あ、あの、ぼく……」

 もじもじしているサングレに私は近づいて目線を合わせつつ、頭の落ち葉をとってあげた。

 「サングレ、もしかして、掃き掃除してくれたの? ありがと~! 助かる~!」
 「え、えへへ……」

 照れ笑いするサングレは天使のようで胸がキュンキュンした。
 サングレは真っ先に打ち解けてくれた為、こうしてお手伝いもすすんでやってくれていた。
 なんだかんだで、この教会って大きいし古いから、本当に助かるのよね~!

 こんな良い子が将来、女の子を『ざぁーこっ♥ ざぁーこっ♥ そんな雑魚で男三人を咥え込むとか、本当にみっともないので早急にイキ死んでください♥(CV・たまり醤油←エロゲによくある声優の源氏名)』って罵るような悪党にするわけにはいかないから、育成、気をつけないとね!

 なので、叱る所は叱りつつ、褒めて伸ばす方針をとっていた。

 「サングレ~! えらいえらぁい! 頭なでなで~!」
 サングレの雪色の髪をシャカシャカ撫で回すと、彼は嬉しそうに目を細めていた。

 「あはは、シスター! くすぐったいです~!」

 ウフフ……アハハ……と、仲良し状態になっていると、扉の隙間から紅龍様がジーッと覗いていた。普通にビックリした。

 「(ビクッ!)ひぃ! 紅龍様! 来てるなら言ってくださいよ! シャ●ニングみたいな構図で何なさってるんですか! 好き!」
 「……テメー、ワタシというモノがありながら、ショタに夢中とか、マジ頭蓋骨砕くゾ……」

 どうやら来訪したのに出迎えがなかったから拗ねてるみたいだった。
 面白ぇ男……と思いつつも、そういう嫉妬深い面倒くささも最推しの魅力なので、私はここぞとばかりにキャッキャウフフしてしまう。

 「やだー♥私の最推しは紅龍様ですってば~♥ていうか、まだゲーム序盤にすらなってないのに、紅龍様、出てきていいんですか? もしかしてバグ?」

 純粋な疑問をぶつけると、紅龍様は椅子にドカッと腰掛けると、足を組んで不貞腐れる。

 「人の存在をバグ呼ばわりするんじゃねーヨ! ゲームのシナリオ的に、そろそろディディとワタシ、愛人関係になってっだロ! だから顔見せ程度はシステム上は問題な……」
 「えっっっ♥もうそんな時期に!? やだ! どうしよう! 私、今日の下着の色、ベージュなのに! すみません、やり直したいので、巻き戻してもらっていいですか!?」

 紅龍様が拳をドォン!とテーブルに打ちつけた。

 「汝這個沙筆(ルジェグォシャビー)!(オマエこのバカ野郎!)ワタシの異能、オマエの勝負下着の為に使うモンじゃねーヨ! ワタシ、此処に来たのは、オマエを抱く為じゃなく、ガキどもと上手くやれてるかどうかの様子見だヨ!」
 「がーん!」
 「なんで様子見に来てやったのにショック受けとんねん!」

 紅龍様が第二の母国語でツッコミをお入れになったけど、愛人でも紅龍様とR18展開があるのなら本望! とか一瞬でも思った乙女心を返してほしい!

 でもそれを言ったら紅龍様から「乙女はワタシとヤリてぇとかストレートに言わねーんだヨ!!」と正論パンチで返された。くっ……!

 そんなことを紅龍様と繰り返していると、私の後ろに隠れていたサングレが顔を上げ、不貞腐れ気味に問いかけてくる。