悪党だらけの乙女ゲームに転生したけど、×亡しすぎて残機が足りない!(溺愛もあるよ★)

 「ゲフォ! ゴフォッ! へ~っくしょんオラァアアア!」

 急に涼しくなった所為で風邪を引いてしまった! 不覚ッッ!
 ベッドに臥せっていると、傍の椅子に腰かけていたガルーが呆れたような声で告げた。

 「……ハラ出して寝てるからだろうが」
 「見てきたように言わないでよ! エッチ!」
 しかしガルーはニヤニヤ笑いだす。

 「なんだ? 夜這いかけられたかったのか? そりゃ悪い事したな」
 「冗談! 私の夜這い予定は紅龍様の部屋に突撃するので埋まってるのよ!」

 憎まれ口を叩いていると、ガルーがフルーツの缶ジュースを放り投げてきた。
 なんで果物ジュースなのかと思ったけど、ビタミン摂れってコト? 気が利くじゃない!

 「やったー! 有難くいただくわね!」
 「おう」
 短く答えるガルーは煙草を吸わないようにしているのか、手持無沙汰に見えた。
 こいつ、ヘビースモーカーだもんねぇ……なーんて考えながらジュースの蓋を開けようとするも……。

 あ、開かない……だと……!?

 どうやら思った以上に力が弱っているらしい。情けない……!

 「オラァ! 開け!!」
 開けようと気合いを入れてみるも、開かない!

 それを見たガルーが「貸してみろ」と告げて、缶ジュースを受け取ると、易々と開けてくれた。

 「ほらよ」
 手に戻された缶ジュースを「ありがとー!」と受け取るも、ガルーは火のついていない煙草を咥えたまま、またニヤニヤし始める。

 「手前が頼むなら、口移しで飲ませてやってもいいんだがな?」
 「ブーッ!」
 噴きかけたけど、こ、こいつ、何てエッチなことを言うのよ! そんな子に育てた覚えはありません!! そこに正座しなさい!

 プリプリ叱っていると、部屋の扉がノックも無しに開く。
 ガルーがスーツの懐に手を入れて身構えるも、飛び込んできたのはサングレだった。

 「うわあ~ん!」

 サングレが泣きながら私のベッドに縋りつき、びえんびえん泣く。

 「しすたぁ~! ぼくをおいて、しんじゃヤダよぉおおお~~~~!! うぇええええん!!」

 いつものドSで放送禁止用語ばっかり使うイキりサングレがッッ!
 昔の幼児時代に戻ってる!!!!

 「しすたぁがしぬなら、ぼくもしぬ――ッ! しすたぁああああ! ぇえええええええん!!」

 ぴぇんしてるサングレにガルーは呆れたように咥えた煙草を上下させながら、サングレの肩を掴んだ。

 「落ち着け、サングレ。そいつは、ただの風邪だ」
 「え」

 ガルーの言葉を聞いたサングレが凍りついた!
 それから真っ赤になって、床を殴る。

 「なにいってるのさガルーくん! カゼでしんじゃうひともいるんだよ! だいすきなシスターがしんじゃったら、ぼく、いきていけないよ!!」

 ぷんすこ怒るサングレ。お前、どうした? 幼児化する術でも喰らったのか?
 何とかサングレをなだめたけど、落ち着いたサングレは大人に戻った。

 「クソッ! アリアの××××野郎が『シスター・ディディが瀕死だ(声真似)』とか言うから! あのクソ×××野郎! ×××切り落としてケツの穴にブチ込んで殺してやるッッ!」

 いつものイキりサングレに戻った。(残念)

 サングレが落ち着いたと思ったら、今度はドアがゴゴゴ……と開き、ボロボロのアリアが姿を見せたのだ。
 どうでもいいけど、アンタら、レディーの部屋にはノックしてきなさいよ!

 しかしアリアは無表情のまま涙をドッバドバ流しており……!!

 「シスター・ディディ……」

 ふらつく姿で入ってくるアリアに、さっきまでぶちキレてたサングレは啞然としているし、ガルーはアホの子を見る目で見ている。

 地面に崩れるように倒れ込んだアリアにガルーとサングレが歩いて近づいたけど(駆け寄れよ!)そんな二人にアリアが背中に背負っていたカゴから七色のキノコやら謎の尖った岩を取り出して渡した。何それ。

 「……秘境にしか存在していないという、どんな病も直るという七色茸と、ユニコーンの角だ。煎じてシスター・ディディに飲ませてくれ……」

 突然の異世界ファンタジー素材にガルーとサングレが全力でツッコむ。

 「手前、ドコ行ってたんだよ! 煎じろとか言われてもキノコの煎じ方なんざ知らねぇよ!」
 「ユニコーンって処女しか会えないんじゃないですか!? あ、アリアならワンチャンいけますか!」

 いつのまにか私の病状はアリアの中で不治の病になっていたらしく、彼が泣きながら(無表情で)抱きついてきた。

 「シスター・ディディ、わたしの妻は貴女だけだ! だから末永く元気でいてくれ!」

 それを見たサングレが「あ、ず、ずるいー!」と逆側から抱きつく。ぐはっ!(圧迫感)

 ぎゅうぎゅうに抱きしめられて、その圧迫祭に白目を剥いている私。
 そこで茨鬼君がノックして入室してきた。

 「ディディ様~。お風邪をお召しになられたと聞きましたので、玉子粥と甘酒をお持ちしました!」

 そんな茨鬼君に全員が振り返る。
 一番年下が最も落ち着いててマトモな件について!!

 茨鬼君はトレイに載せた料理を運んでくると、お粥をレンゲに掬って、ふうふうすると私に差し出してくれた。

 「はい、ディディ様、あーん、してくださいっ」

 差し出されるままに「あーん」して食べたけど……。

 「あら、おいっしぃぃいいいい~~~!」

 昆布だし? の旨味を効かせたお粥の美味しいこと……!(涙)
 甘酒は適度に冷やされていて、控え目な甘さが体に心地よい!
 風邪ひいてる時に『こういうのが食べたかったんや!』というのが具現化されたかのような茨鬼君の料理の腕前に私は感心してしまう。

 「茨鬼君、ありがと~! 料理上手なのねぇ~」
 「え、えへへ……。父さ……あ、いえ、あの男が、よく風邪を引いてて看病には慣れてるので、お任せください!」
 珠天先生って医者なのに風邪っぴきなんだ……。

 茨鬼君の頭をナデナデすると、彼は頬を赤らめて照れていた。

 それを見たガルー、サングレ、アリアが立ち上がる。

 「メシ食いたかったのかよ」
 「この七色の卑猥なキノコとユニコーンの角で何か作れますかね?」
 「とりあえず全部砕いてスープにするか。……味は保証しないぞ」

 嫌な予感しかしない。
 この子達、最低限の自炊は出来るけど、療養食とか無理なんじゃないかな?
 しかし三人は材料(ファンタジー素材)を抱えて台所へ向かう。



 結果、すんごいクソニガスープが出来上がり、全員に体を押さえつけられて飲まされた私は、風邪は治った……。
 ものの、しばらく食べるものが全てクソニガスープの味になるという呪いにかかったのだった……。