「はぁぁあぁああぁぁあぁぁあぁぁあぁあっぁぁあああああああ!!??!?!?(ド低音)」

 心の声が思わず生声に出た。
 なのにマユ公は当然のことと言わんばかりに胸を張っている。

 「何を驚いているんですか? だって、こんなのマフィアクターじゃないですから」
 「いや、おま、だからって!」

 だからって罪なき敬虔なシスターに『死ね』って普通、言います?
 私は中指を立てて反論した。

 「ちょっと待ってよ! 正しいゲームの道筋の為に死ねとか、アンタの血の色、タコと同じ(青)なんじゃないの!?」

 しかし必死の訴えもマユコロは「話になりませんね」と告げる。
 しかも眼鏡クイクイするみたいなポーズで溜息をついて。(正直、イラッとしました Byディディ)
 そしてその煽ってんのかポーズのままマユコはアホの子を諭すように続ける。

 「いいですか? ディディさん、本来の貴女は、この時空には居ないはずの人なんですよ。紅龍様の愛人という立場を失い、ガルーに射殺されるか、サングレに刺殺されるか、アリアにナレ死されるかで、とっくに退場してるべきなんです! なのに、のうのうと生きてるとか!」
 「のうのうと生きてることに文句言われる筋合いないわよ! てか、そんなこと言ったって、こちとら生存ENDを探るので必死だったのよ! 死にたくないでしょ!」

 っていうか、わんこそばみたいに殺されまくったんで、もう死のおかわりは不要なのよ! と訴えるも、この経験をしたことがないマユコは他人事の正義感を容赦なくぶつけてくる。

 「それがオカシイんですよ! ゲームを真に愛するファンなら、こんな変貌させないはずです! なのに茨鬼君とか珠天先生とまで出逢ってフラグ立ててるとか、ユリちゃんへの挑戦としか思えない! 本来はユリちゃんが逆ハーレムであるはずなのに!」
 「だってユリ公、茨鬼君の乳とかケツとか触るから嫌われてんだもん。私、普通にしてるだけでモテるくらい、ユリがヴァカだから……」

 パーン☆ とビンタされた。いでぇ!!

 「ユリちゃんをヴァカとか本当のこと言うの止めてください! そういうの地雷です!」
 「殴る前に言葉で止めなさいよ! お付きの人が肉体言語ばかり使っていいと思ってんの!?」
 「失礼なことをいうディディが悪いんです! さすが悪女ですよね! 信じられません!」

 穏便()に話していた私は、マユコの暴言暴挙に遂にキレた。

 「カーッ! もう面倒くせぇわね! 殴り合って最後まで立ってた方の意見が通るっていうロックな展開でいいでしょもう!! おら! 鮮血の宴の始まりだ! 武器を構えろ!」

 私が金属バットを背中から取り出して素振りする。
 マユコは逃げ回りつつ「野蛮野蛮!」と騒いでた。
 けど、他人様に死ね死ねいうアンタの方が野蛮よ! キーッ!

 と、お互いに掴みかかりながらキーキーと猿山のメス猿バトルみたいにしていた。

 すると……。

 「おい、ディディ、何してるんだヨー^^」

 通りすがりの紅龍様に見つかった。

 しかも状況的に私がマユコを押し倒して金属バットでブン殴ろうとしてるみたいな光景だった。

 紅龍様「……^^」

 凍りつく紅龍様。
 そこでマユコが「あ、ユリちゃんの紅龍様」と余計なことを言った瞬間、紅龍様が殺意を漲らせて手刀を振り上げる。私は止めた。

 「やめてください紅龍様!」
 「あ? 何で止めるんだヨ!? ワタシが侮辱されてるのにタンマかける気か!?」
 「いや、あの……」

 マユコの為じゃなく、ここで紅龍様がスプラッタ展開をすると、ほら、返り血とか臓物的なものとか至近距離にいる私の顔面にブシャーッて飛んでくるかもだし……と訴える。
 なので距離をとるんで、その後に存分にマユコの屍を銀河の海に散らしてくださいと伝える。
 すると紅龍様から額を軽くコッツン☆されて叱られた。

 「オマエ! 根性、汚いヨ!」
 「テヘぺろッ♥ よく言われますぅ♥」
 「微塵も褒めてねーヨ!」

 そうして紅龍様とイチャイチャキャッキャウフフしていると、マユコはハンカチを噛みしめて呟いた。

 「嘘……! あの難易度:最凶の攻略キャラの紅龍様とイチャついてるとか……ッッ!」

 その言葉に私は、のけぞって高笑いする。

 「おーっほほほほほほほほ! 見た? 見た? アナタさぁ、紅龍様と私のステディな関係を知らないなんて、どうやらリサーチ不足のようね! もう私と紅龍様は熱い夜を過ごし合った仲なのよ! R18スチルをお見せ出来ないのが残念だわあ~?? フヘヘヘヘヘ!(煽り顔)」

 鼻高々に宣言する私に紅龍様が裏手ツッコミを入れた。

 「おい! オマエとは一回もヤッてねーだロ!」
 「しっ! 私の脳内では脳内紅龍様とヤッてますんで既成事実(妄想)です!」
 「知らない間に既成事実(妄想)を作られてるの怖ぇヨ!」

 でも紅龍様は叱りつつも、私の肩を抱き寄せると、フッと笑った。

 「でも、ワタシとディディの仲を知らないとか、オマエ、この街の新参カ?」

 至近距離の紅龍様から熱い吐息が首筋に伝わって……。
 どきーん♥ と私が目をハートにしている間に、マユコは涙を滲ませて走り去る。

 「うわーん! ユリちゃんが居るべきポジションなのに、悪女が居座ってますぅぅぅううう! こんなのシステム的におかしいです――!!」

 あっ、待て!! 止めようとするも、私の肩を紅龍様が握りしめていた。
 恐る恐る振り返ると……。

 「……で、システムがおかしいって、どういうコトだヨ~?^^」

 ちょまっ……!! 笑ってるけど、目が笑ってない!!
 こうして私はマユコという驚異の後に、紅龍様という新脅威と対峙するハメになるのだった……。