そんなユリの変化について忘れかけていた数日後――。
福音教の奉仕活動の一つである『聖女ユリの奇跡』を月に一度、民衆に公開する日がある。
私は買い物のついでに通りがかったんだけど……。
普段ならイケメンの使徒やアリアに構い倒して仕事してないユリが、今日は老若男女を問わずに奉仕活動に勤しんでいるのを見かけた。
民衆に向けて優しく微笑みながら語りかけている。
「はい、これでケガは大丈夫ですよ。でも無理しないでくださいね」
「私の奇跡の力がお役に立てたなら何よりです」
「お礼なんて止めてください。これは私の使命ですから……」
嘘やろ……? あのアホがヒロインになっている……!? 目を擦りながら見守っていると、警護で駆り出されたアリアも困惑しているようだった。
まるでゲームの聖女ユリそのものの振る舞い……!
そして何となく既視感があったのだけど、その答え合わせは直ぐに訪れた。
「うわぁあああぁあああああ! 暴れ馬だぁあああぁあああああああ!」
モブ市民の声に振り返る。
荷馬車の馬が暴れながらユリの方に突っ込んできたのだ!
このままではユリが怪我してしまう!!
しかし、間一髪の所でアリアが飛び出す!
アリアは暴れ馬に飛び乗ると、手綱を引いて馬を制御したのだ。
そして地面に座り込んでいるユリがアリアを見上げた。
「あ、ありがとうございま……」
お礼を述べるユリに、アリアは首を振った。長い髪がさらりと揺れる。
「……気にするな。これは、わたしの任務だ」
そうしてお付きのシスターがユリを抱き起こしていたけど……!
このシーン! ゲームでユリがアリアを『護衛の人』から『幼馴染みのアリア』として認識するイベントだわ!! スチルで見たもの!!
ただ、ゲームでは馬から下りたアリアがユリに手を差し伸べる流れがあったのに、それが無くなっていた。
でもそこでお付きのシスターがアリアを叱りつけたのだ。
「使徒アリア! 貴方は聖女ユリ様が伏されているのに支えもしないとは! 無礼者!」
「……」
言われてアリアが下馬した後、ユリに手を差し伸べた。
そしてユリを起こすアリアは、ゲームの展開そのもので……!
う、美しい~! 美男美女で絵になるわ!!
やだ――! ゲームの流れきた!? きちゃった!? 嬉しい!!
私が散々、引っかき回しちゃってたから心配してたけど、運命力という名のシステムがようやく仕事し始めたのね~~!!
ユリもマトモになったみたいだし、このまま逆ハーレム√いこうぜっぜっぜっ!!
私がガッツポーズしながら見ていると、視線に気づいたアリアがユリの手をパッと離してしまった。
おいこらぁ!! そこはエスコートするところやろがい!! 何しとんねん!! とブーイングしながら親指を下げているのに、アリアはシッポをブンブン振った子犬みたいに駆け寄ってきた。
「シスター・ディディ。買い物か。荷物を持とう」
「いや、それよりユリを持ちなさいよ!」
「何故だ」
ロマンスが始まらないッッ!!
乙女心をわかっていないとガミガミクドクドとアリアに説教する私。
でも、そんな私に誰かが鋭い眼差しを向けているのに気づいた。
福音教の奉仕活動の一つである『聖女ユリの奇跡』を月に一度、民衆に公開する日がある。
私は買い物のついでに通りがかったんだけど……。
普段ならイケメンの使徒やアリアに構い倒して仕事してないユリが、今日は老若男女を問わずに奉仕活動に勤しんでいるのを見かけた。
民衆に向けて優しく微笑みながら語りかけている。
「はい、これでケガは大丈夫ですよ。でも無理しないでくださいね」
「私の奇跡の力がお役に立てたなら何よりです」
「お礼なんて止めてください。これは私の使命ですから……」
嘘やろ……? あのアホがヒロインになっている……!? 目を擦りながら見守っていると、警護で駆り出されたアリアも困惑しているようだった。
まるでゲームの聖女ユリそのものの振る舞い……!
そして何となく既視感があったのだけど、その答え合わせは直ぐに訪れた。
「うわぁあああぁあああああ! 暴れ馬だぁあああぁあああああああ!」
モブ市民の声に振り返る。
荷馬車の馬が暴れながらユリの方に突っ込んできたのだ!
このままではユリが怪我してしまう!!
しかし、間一髪の所でアリアが飛び出す!
アリアは暴れ馬に飛び乗ると、手綱を引いて馬を制御したのだ。
そして地面に座り込んでいるユリがアリアを見上げた。
「あ、ありがとうございま……」
お礼を述べるユリに、アリアは首を振った。長い髪がさらりと揺れる。
「……気にするな。これは、わたしの任務だ」
そうしてお付きのシスターがユリを抱き起こしていたけど……!
このシーン! ゲームでユリがアリアを『護衛の人』から『幼馴染みのアリア』として認識するイベントだわ!! スチルで見たもの!!
ただ、ゲームでは馬から下りたアリアがユリに手を差し伸べる流れがあったのに、それが無くなっていた。
でもそこでお付きのシスターがアリアを叱りつけたのだ。
「使徒アリア! 貴方は聖女ユリ様が伏されているのに支えもしないとは! 無礼者!」
「……」
言われてアリアが下馬した後、ユリに手を差し伸べた。
そしてユリを起こすアリアは、ゲームの展開そのもので……!
う、美しい~! 美男美女で絵になるわ!!
やだ――! ゲームの流れきた!? きちゃった!? 嬉しい!!
私が散々、引っかき回しちゃってたから心配してたけど、運命力という名のシステムがようやく仕事し始めたのね~~!!
ユリもマトモになったみたいだし、このまま逆ハーレム√いこうぜっぜっぜっ!!
私がガッツポーズしながら見ていると、視線に気づいたアリアがユリの手をパッと離してしまった。
おいこらぁ!! そこはエスコートするところやろがい!! 何しとんねん!! とブーイングしながら親指を下げているのに、アリアはシッポをブンブン振った子犬みたいに駆け寄ってきた。
「シスター・ディディ。買い物か。荷物を持とう」
「いや、それよりユリを持ちなさいよ!」
「何故だ」
ロマンスが始まらないッッ!!
乙女心をわかっていないとガミガミクドクドとアリアに説教する私。
でも、そんな私に誰かが鋭い眼差しを向けているのに気づいた。



