「ディディ様!?」

 驚く茨鬼君に私はSNSで見た情報を思い出して叫ぶ。

 「そうだわ! 親子丼よ! 親子丼!」

 私は茨鬼君が出てるファンディスクはプレイしてないけど、そういえばSNSの話題で『珠天先生の親子丼がエロすぎて死ぬ』『エロの化身の珠天先生のDNAを確実に受け継いでる息子氏との親子丼、大変美味しゅうございました』とか言われてたわ! くそっ! 私も見とけば良かった!

 つまり、本来なら珠天先生と茨鬼君は親子プレイするぐらい仲良し(?)なんじゃない!?

 そもそも珠天先生、全キャラと複数プレイがあるくらいエロ包容力が豊かなのよ!!
 言葉責めでソフトSMしてくるエロ医者なんだから!!(鼻血)

 「それがユリじゃなく私が出しゃばった所為で二人が不仲になってしまったなら、責任とって親子丼させなきゃいけな……」

 と言いかけて私は紅龍様、珠天先生、茨鬼君に見つめられていることに気づいた。

 紅龍様の額に青筋が浮かび、拳をバキバキ鳴らしだしている!
 でも珠天先生と茨鬼君はキョトンとしていた。

 「ディディさん、親子丼が食べたいのかい? それじゃあ今日のお夕飯は親子丼にしようか~」
 「ディディ様! こいつが作ったものより、おれが殺して略奪してきますので!」

 紅龍様にブッ飛ばされる前に私は張子の虎の如くガックンガックン頷いた。

 「そそ、そうそう! 親子丼が食べたかったんですぅ♥私、親子丼が大好物でぇ♥」

 きゃぴるん顔で誤魔化すも、背後からの紅龍様の圧が……圧が凄い!
 でも紅龍様、安心してください! 貴方のディディは操が固い女ですもの!

 私は笑顔で茨鬼君に叫んだ。

 「よっしゃ! 茨鬼君! 今から聖女ユリと全裸で相撲でもしよっか♪」
 「う? えぇええええええええええええええええええ!?」

 茨鬼君が床から5㎝くらい浮いてたけど、私は茨鬼君の腕を掴んで入り口へと向かう。
 この奇行に紅龍様も驚いていたけど、茨鬼君は泣きながら「嫌です嫌です~!」と首を振っていた。

 こんなに嫌がられるって、聖女ユリは何したんやと思ったら、茨鬼君と遭遇する度に尻だの胸だの触ってくるのでニガテになったらしい。
 チッ! あのアホ性女が!!

 せっかくローション相撲で良い雰囲気になった所で親子丼してもらって父子仲良し計画が台無しじゃない! 
 とギリギリする横で紅龍様が「お前のロマンチック、色々おかしいヨ!」とツッコまれた!
 じゃあどうロマンチックしろって言うんですか!(逆ギレ)

 そうしていると、珠天先生がおずおずと手を伸ばして止めてきた。

 「あの、ディディさん、知らないお宅の子とお相撲はちょっと、ウチの茨鬼クンは人見知りだから早いかなって……」
 「大丈夫です! 珠天先生が見本を見せてくだされば、茨鬼君もシステムに逆らえずにユリとねんごろな仲になってくれるかと! ささ、先生、イキましょう!」
 「そ、そうなのかなぁ……? 僕、運動音痴なんだけど……」
 「先生の運動能力(夜の)はイベントスチルで知ってます! すっごい体幹(夜の)してましたよ! だから自信もってください!」

 戸惑いつつもついてくる珠天先生に、遂に茨鬼君がビエン泣きした。

 「うわーーん! 嫌だよ嫌だよ! とうさーーん!」

 そうして珠天先生に抱きつく茨鬼君の姿に先生もビックリしつつも抱きしめていた。

 「茨鬼クン!?」
 「父さん! おれ、良い子になるから、聖女ユリ様と再婚とか止めてよー!」
 「え? どうしてそんな話に?」
 「ユリ様は嫌だー!」

 ワケがわかっていない珠天先生はともかく、茨鬼君がガチ泣きして縋りついたことで二人の間のわだかまりは多少、マシになったようだった。

 珠天先生が照れたような微笑を浮かべながら茨鬼君の頭を撫でて慰めていた。

 「……大丈夫だよ、茨鬼クン。僕は、キミを置いていったりしないからね」

 いやぁ~美しい親子愛だ……と私がハンカチで涙を拭ってると紅龍様に耳を引っ張られた。

 「アイタタ! 何するんですか紅龍様!」
 「ナニするんデスカ? じゃねーヨ! オマエ、手段を選べヨ!」
 「で、でも二人が最終的に親子丼になったから良いじゃないですか!」
 「その言い方ヤメロ! やり方がマフィアよりマフィアしてて引くワ!!」

 その後、私は紅龍様に正座で説教された。
 けど、珠天先生の美味しい親子丼(食品の方)が食べれたし、茨鬼君は『ディディ様はおれ達の為に、汚れ役を担ってくださったんですね! 流石です!』と何か良い方向に受け取ってくれてるのでヨシとした!