雨がザーザー降る市街地を部屋から見つめながら雑誌を読んでいると、玄関から傘を立てかけるような音がした。
護衛の茨鬼君が暴れていないということは、ガルーやサングレ達が帰ってきたのかな~なんて思って立ち上がって出迎える。
しかしドアの外に立っていたのは、びしょ濡れの紅龍様だった。
「紅龍様? どうしたんですか? ビッショビショ!」
慌ててタオルを持っていくと、紅龍様は前髪から滴る雨水を指でかきあげながら、ぷんすこ怒っていた。
「どーもこーもねーヨ! ココに帰る途中でイキナリ豪雨だヨ! コンビニで傘買ったけど、イミねーくらい濡れたワ!」
マフィアのボスってコンビニで傘を買うんだ~……。
悪党だから傘とかパクってくるのかと思ったら、そんなショボい盗みをするのはド三流の小悪党だけだし、自分が一回ソレやられてキレたから、盗んだヤツを見つけ出して報復したとか……。
流石に本職の方は言うことが違うわ~……。(報復するのか~……)
ちなみに、部下の黒服の皆さんは傘ぐらい持ってないのかと問いかけると、紅龍様は更に嫌そうな表情をした。
「……アイツら『ボスの代わりに俺が濡れます♥』『ボス! 俺の温もりがこもった上着をどうぞ♥』とか、キメーから全員ブン殴ったら『ありがとうございます! ご褒美です!』って叫びながら気絶しちまってヨー。気色悪いから放置してきたヨー」
そういえば紅龍様は過去に部下の皆さんの忠誠度が低くて悩んでいたので、私がアドバイスしたことがあった。
『紅龍様はゲームでは純粋な主従関係とか向いてなかったんですよね。でもユリ調教スキルだけはアホみたいに高かったから、部下の皆さんも調教してみては?』と。
当然、紅龍様はイヤそ~な顔をした。
『マジかヨ~……。イヤだヨ~……。ていうか、なんでゲームのワタシはユリなんか調教しとんねん! アイツとワタシ、親子くらいの年齢差あるやろがい! 引くワ!』
とかなんとか言いつつも部下調教をやってみた結果――。
『ボス♥ご命令を♥ハァハァ』
『ボスの鉄拳、マジご褒美っす♥ハァハァ』
『ボス~♥ 長い脚での回し蹴り、ありがとうございます♥ハァハァ』
と黒服の皆さんは鋼の忠誠心をもつドMへと無事育ち、紅龍様の為に自ら盾になるくらいには忠誠度が上がった。
ワーイ! おめでとうございます! と喜ぶ私に紅龍様は『ワタシ、部下と仲良くしたかっただけで、M奴隷が欲しかったワケじゃないんだけどヨー……』と、ホロリしていた。
そんなSっ気の多いご主人様気質な紅龍様が、私には少し弱いところとか寂しがり屋なところを見せてくれるようになったの、何だか信頼されてるみたいで嬉しいな♪
紅龍様は今日はチャイナ服ではなく黒のスーツを着ていたらしく、ビショ濡れの上着やネクタイをぽいぽい洗濯カゴに放り込んでいた。
ちょ! 紅龍様! クリーニングに出しますから! 縮んじゃう!
慌てて拾って顔を上げると、雨でじっとり濡れたワイシャツから、紅龍様の背中が透けているのが見えた。
生地越しの紅龍様の背中は、複雑な龍の紋様みたいなタトゥーがびっしり入っている。
艶やかなタトゥーは布一枚を纏っていても存在感がバツグンで、鍛え抜かれた背筋を更に色っぽく見せていた。
推しの背中をジロジロ見ていると、くっくっと、笑い声がした。
「……そんなに見たいなら、もっと堂々と見たらどうだ? ……お前の為のカラダだ」
紅龍様の台詞に彼の顔を見つめる。
すると誘うような甘やかな目つきと、舌を這わせた唇が……。
濡れたワイシャツが、肩から滑り落ち、あらわになる胸板。
首周りに掘られた龍の鱗のタトゥーは、一枚だけ逆さに描かれていた。
それは『龍の逆鱗』を示すんだとか。
その部位を紅龍様が「触れ」と言わんばかりに、指でトントンと示す。
紅龍様の組織では逆鱗に勝手に触れた相手は必ず殺すらしいけど『唯一無二』の相手にだけは触れるのを許す掟があるのを思い出して、ドキッとする。
鍛え抜かれた腹筋や、鎖骨に落ちる陰影は、しとどに濡れている肌と相まって、性的な部位のように見える程、煽情的だった。
そしてつまり私は鼻血を噴いた。
「うわっ!」
驚く紅龍様の前で、ドッバドバに鼻血を噴いていた。
エロくて、エロくて、推しがエロくてありがとうございます!
と拝みながら推しの上着を鼻血まみれにしてクリーニングしみ抜きコース行きにしてしまったけど、仕方ないよね! 推しがエッチすぎるのが悪いんだからホント仕方ないよね!! と泣き叫びながら歓喜してエロの化身・紅龍様を拝んでいると、紅龍様が半裸のまま駆け寄ってきた。
「おい! しっかりしろディディ!」
「キャー! 推しの至近距離の半裸! 私はしっかりしてますよ紅龍様ブファッ!」
「しっかりしてねーヨ! また鼻血かヨー!」
わあわあ騒いでいると、玄関外で待機していた茨鬼君が飛んできた。
「ディディ様! ボス! 何があったんですか!?」
そして半裸の紅龍様を拝み倒しながら鼻血を噴いている私と、服を着るべきかどうかで悩んでいる紅龍様の姿に茨鬼君が目を回す。
「……えっ? えっ? 何の儀式ですか!?」
そう言いながらティッシュを持ってきてくれる茨鬼君。
紅龍様の『儀式ちゃうわー!』を最後に、私はパッタリ倒れるのだった。
護衛の茨鬼君が暴れていないということは、ガルーやサングレ達が帰ってきたのかな~なんて思って立ち上がって出迎える。
しかしドアの外に立っていたのは、びしょ濡れの紅龍様だった。
「紅龍様? どうしたんですか? ビッショビショ!」
慌ててタオルを持っていくと、紅龍様は前髪から滴る雨水を指でかきあげながら、ぷんすこ怒っていた。
「どーもこーもねーヨ! ココに帰る途中でイキナリ豪雨だヨ! コンビニで傘買ったけど、イミねーくらい濡れたワ!」
マフィアのボスってコンビニで傘を買うんだ~……。
悪党だから傘とかパクってくるのかと思ったら、そんなショボい盗みをするのはド三流の小悪党だけだし、自分が一回ソレやられてキレたから、盗んだヤツを見つけ出して報復したとか……。
流石に本職の方は言うことが違うわ~……。(報復するのか~……)
ちなみに、部下の黒服の皆さんは傘ぐらい持ってないのかと問いかけると、紅龍様は更に嫌そうな表情をした。
「……アイツら『ボスの代わりに俺が濡れます♥』『ボス! 俺の温もりがこもった上着をどうぞ♥』とか、キメーから全員ブン殴ったら『ありがとうございます! ご褒美です!』って叫びながら気絶しちまってヨー。気色悪いから放置してきたヨー」
そういえば紅龍様は過去に部下の皆さんの忠誠度が低くて悩んでいたので、私がアドバイスしたことがあった。
『紅龍様はゲームでは純粋な主従関係とか向いてなかったんですよね。でもユリ調教スキルだけはアホみたいに高かったから、部下の皆さんも調教してみては?』と。
当然、紅龍様はイヤそ~な顔をした。
『マジかヨ~……。イヤだヨ~……。ていうか、なんでゲームのワタシはユリなんか調教しとんねん! アイツとワタシ、親子くらいの年齢差あるやろがい! 引くワ!』
とかなんとか言いつつも部下調教をやってみた結果――。
『ボス♥ご命令を♥ハァハァ』
『ボスの鉄拳、マジご褒美っす♥ハァハァ』
『ボス~♥ 長い脚での回し蹴り、ありがとうございます♥ハァハァ』
と黒服の皆さんは鋼の忠誠心をもつドMへと無事育ち、紅龍様の為に自ら盾になるくらいには忠誠度が上がった。
ワーイ! おめでとうございます! と喜ぶ私に紅龍様は『ワタシ、部下と仲良くしたかっただけで、M奴隷が欲しかったワケじゃないんだけどヨー……』と、ホロリしていた。
そんなSっ気の多いご主人様気質な紅龍様が、私には少し弱いところとか寂しがり屋なところを見せてくれるようになったの、何だか信頼されてるみたいで嬉しいな♪
紅龍様は今日はチャイナ服ではなく黒のスーツを着ていたらしく、ビショ濡れの上着やネクタイをぽいぽい洗濯カゴに放り込んでいた。
ちょ! 紅龍様! クリーニングに出しますから! 縮んじゃう!
慌てて拾って顔を上げると、雨でじっとり濡れたワイシャツから、紅龍様の背中が透けているのが見えた。
生地越しの紅龍様の背中は、複雑な龍の紋様みたいなタトゥーがびっしり入っている。
艶やかなタトゥーは布一枚を纏っていても存在感がバツグンで、鍛え抜かれた背筋を更に色っぽく見せていた。
推しの背中をジロジロ見ていると、くっくっと、笑い声がした。
「……そんなに見たいなら、もっと堂々と見たらどうだ? ……お前の為のカラダだ」
紅龍様の台詞に彼の顔を見つめる。
すると誘うような甘やかな目つきと、舌を這わせた唇が……。
濡れたワイシャツが、肩から滑り落ち、あらわになる胸板。
首周りに掘られた龍の鱗のタトゥーは、一枚だけ逆さに描かれていた。
それは『龍の逆鱗』を示すんだとか。
その部位を紅龍様が「触れ」と言わんばかりに、指でトントンと示す。
紅龍様の組織では逆鱗に勝手に触れた相手は必ず殺すらしいけど『唯一無二』の相手にだけは触れるのを許す掟があるのを思い出して、ドキッとする。
鍛え抜かれた腹筋や、鎖骨に落ちる陰影は、しとどに濡れている肌と相まって、性的な部位のように見える程、煽情的だった。
そしてつまり私は鼻血を噴いた。
「うわっ!」
驚く紅龍様の前で、ドッバドバに鼻血を噴いていた。
エロくて、エロくて、推しがエロくてありがとうございます!
と拝みながら推しの上着を鼻血まみれにしてクリーニングしみ抜きコース行きにしてしまったけど、仕方ないよね! 推しがエッチすぎるのが悪いんだからホント仕方ないよね!! と泣き叫びながら歓喜してエロの化身・紅龍様を拝んでいると、紅龍様が半裸のまま駆け寄ってきた。
「おい! しっかりしろディディ!」
「キャー! 推しの至近距離の半裸! 私はしっかりしてますよ紅龍様ブファッ!」
「しっかりしてねーヨ! また鼻血かヨー!」
わあわあ騒いでいると、玄関外で待機していた茨鬼君が飛んできた。
「ディディ様! ボス! 何があったんですか!?」
そして半裸の紅龍様を拝み倒しながら鼻血を噴いている私と、服を着るべきかどうかで悩んでいる紅龍様の姿に茨鬼君が目を回す。
「……えっ? えっ? 何の儀式ですか!?」
そう言いながらティッシュを持ってきてくれる茨鬼君。
紅龍様の『儀式ちゃうわー!』を最後に、私はパッタリ倒れるのだった。



