顔を上げると、廊下の先、入り口から紅龍様が部下の黒服を連れて駆け込んできていた。
紅龍様は私の姿を見つけると、名前を呼びながら近づいてくる。
「ディディ!」
「紅龍様!」
私が茨鬼君の腕から下りた瞬間、何かが風を切って通り過ぎていった。
それが紅龍様の蹴りだとわかったのは、彼の長い足が私の真横にあったからだ。
振り返った先には顔面を蹴られたのか、床に倒れ込む茨鬼君がいた。
手練れの茨鬼君が回避できずに叩き込まれた蹴撃は相当の威力だったのか、彼は昏倒しかけている。
それでも茨鬼君は起き上がって土下座し、紅龍様は冷酷な眼差しで拳を鳴らして茨鬼君に近づいている!
「紅龍様!」
私が茨鬼君と紅龍様の間に割って入る。
でも紅龍様は「ディディ! お前の出る幕ではない! 引っ込んでいろ!」と、腰が抜けそうな低い怒声を叩きつけてきた。
こ、これは紅龍様、怒り過ぎて頭に血が昇って、血を見ないと落ち着かない状態の時や!
咄嗟にそう判断した私は、ハンカチを噛みしめてヨヨヨ泣きをする。
「ひ、ひどい……怖い目に遭った私の心配より、茨鬼君をお仕置きする方が大事だなんて! 私に盗聴器つけるくらい執着してたのは嘘だったんですか! 私よりもカワイイ美少年とプロレスする方が好きなんて! 私をBLに挟まる女状態にしないでください!」
頭頂の盗聴器をアピールしながらこれみよがしに悲しむと、紅龍様の怒りが少しだけ落ち着いたのか、溜息をついた後に頭をがしがし掻いていた。
「……すまなかったディディ。お前の身の最低限の安全は盗聴器でわかったが、お前を無傷ではない状態に遭わせたクソガキを思うと、殺してやりたくてたまらんのだ」
「それは茨鬼君が悪いんじゃなくて、変態ウルボラ野郎が悪いんです!」
「変態!? オマエ、変態に好かれすきだロ!」
「それはそーなんですけど、そーじゃなくて! むしろ茨鬼君は一生懸命、頑張ってくれました!」
私が茨鬼君の背中を示す。
彼は私を背負って逃げる時に騎士達から受けた剣の一撃で、背中をずたずたに切り裂かれていた。それでも『痛い』と言わずに、私を励まし続けてくれたのだ。
しかし、紅龍様はそれでも納得しないのか、許そうとしない。
それどころか、ヤキモチ全開で叱ってきた。くそっ! 推しの心が狭い!
紅龍様は処分の決定を変えようとしない。
「やはりお前の護衛に茨鬼は不向きだった! 今日という今日こそ処分する!」
「適切でしたァ~ッ! 茨鬼君のお陰で私ノーダメ帰還してますからァ~ッ! 残機減ってないでしょ~ッ!? 実質無傷ですゥ~ッ! ヘイヘイヘ~イ♪」
「何だその腹立つ口調は! ふざけるなヨ! またお前の若い男好きかヨ! 浮気もいい加減にしろよテメーッ!」
ッグヌゥゥゥゥウウウ!!
紅龍様、キレすぎて普段のカタコトと本気トークが入り混じってるし!!
推しの頑固さに私はプッツン来て、茨鬼君に近づくと、彼を抱きしめた。
「ふェっ!? ディディさまーっ!?」
「ディディ!?」
茨鬼君が真っ赤になって驚いていたし、紅龍様は真紅になって怒っていた。
けど、そんな二人に私は声を荒げる。
「じゃあ本気なら良いんですか!?」
「なっ……!」
戸惑う紅龍様に私はヤケクソ気味に続ける。
「浮気じゃなくて本気になっちゃえば満足ですか!?」
紅龍様は私の姿を見つけると、名前を呼びながら近づいてくる。
「ディディ!」
「紅龍様!」
私が茨鬼君の腕から下りた瞬間、何かが風を切って通り過ぎていった。
それが紅龍様の蹴りだとわかったのは、彼の長い足が私の真横にあったからだ。
振り返った先には顔面を蹴られたのか、床に倒れ込む茨鬼君がいた。
手練れの茨鬼君が回避できずに叩き込まれた蹴撃は相当の威力だったのか、彼は昏倒しかけている。
それでも茨鬼君は起き上がって土下座し、紅龍様は冷酷な眼差しで拳を鳴らして茨鬼君に近づいている!
「紅龍様!」
私が茨鬼君と紅龍様の間に割って入る。
でも紅龍様は「ディディ! お前の出る幕ではない! 引っ込んでいろ!」と、腰が抜けそうな低い怒声を叩きつけてきた。
こ、これは紅龍様、怒り過ぎて頭に血が昇って、血を見ないと落ち着かない状態の時や!
咄嗟にそう判断した私は、ハンカチを噛みしめてヨヨヨ泣きをする。
「ひ、ひどい……怖い目に遭った私の心配より、茨鬼君をお仕置きする方が大事だなんて! 私に盗聴器つけるくらい執着してたのは嘘だったんですか! 私よりもカワイイ美少年とプロレスする方が好きなんて! 私をBLに挟まる女状態にしないでください!」
頭頂の盗聴器をアピールしながらこれみよがしに悲しむと、紅龍様の怒りが少しだけ落ち着いたのか、溜息をついた後に頭をがしがし掻いていた。
「……すまなかったディディ。お前の身の最低限の安全は盗聴器でわかったが、お前を無傷ではない状態に遭わせたクソガキを思うと、殺してやりたくてたまらんのだ」
「それは茨鬼君が悪いんじゃなくて、変態ウルボラ野郎が悪いんです!」
「変態!? オマエ、変態に好かれすきだロ!」
「それはそーなんですけど、そーじゃなくて! むしろ茨鬼君は一生懸命、頑張ってくれました!」
私が茨鬼君の背中を示す。
彼は私を背負って逃げる時に騎士達から受けた剣の一撃で、背中をずたずたに切り裂かれていた。それでも『痛い』と言わずに、私を励まし続けてくれたのだ。
しかし、紅龍様はそれでも納得しないのか、許そうとしない。
それどころか、ヤキモチ全開で叱ってきた。くそっ! 推しの心が狭い!
紅龍様は処分の決定を変えようとしない。
「やはりお前の護衛に茨鬼は不向きだった! 今日という今日こそ処分する!」
「適切でしたァ~ッ! 茨鬼君のお陰で私ノーダメ帰還してますからァ~ッ! 残機減ってないでしょ~ッ!? 実質無傷ですゥ~ッ! ヘイヘイヘ~イ♪」
「何だその腹立つ口調は! ふざけるなヨ! またお前の若い男好きかヨ! 浮気もいい加減にしろよテメーッ!」
ッグヌゥゥゥゥウウウ!!
紅龍様、キレすぎて普段のカタコトと本気トークが入り混じってるし!!
推しの頑固さに私はプッツン来て、茨鬼君に近づくと、彼を抱きしめた。
「ふェっ!? ディディさまーっ!?」
「ディディ!?」
茨鬼君が真っ赤になって驚いていたし、紅龍様は真紅になって怒っていた。
けど、そんな二人に私は声を荒げる。
「じゃあ本気なら良いんですか!?」
「なっ……!」
戸惑う紅龍様に私はヤケクソ気味に続ける。
「浮気じゃなくて本気になっちゃえば満足ですか!?」



