そもそも私は『悪女』っていう外の人の補正効果の所為か、他人から好かれない……っていうか警戒されやすい……。
 道で子供に出会うとギャン泣きされるし、犬には吠えられるし、給食費が無くなったら真っ先に疑われるタイプらしく散々である。

 けど、そんな補正効果、推しの紅龍様とちびっこたち(元)に嫌われなければ別にどーでもいいし~? と今なら思える。
 むしろ悪事は効果バツグンに発揮されるというご利益があるので、逆に便利なのでは?

 そんなわけで教会の騎士達に投げキッスするだけでメロメロになってる。

 ちびっこ時代のガルーやサングレを教会のキタナイ大人どもがエッチなことしようとして迎えにきた時も「嘘は女を彩るアクセサリーですのよホホホ」とか適当に嘘ぶっこいたら回避できたし、嘘の補正効果も凄い。(凄い)

 てなわけで、お色気と嘘という悪女の面目躍如を発揮しまくり、騎士達を骨抜きしてみせた。
 ユリは怒って騎士のマントを引きずりながら帰って行ったけど、それを見ていた茨鬼君が目を輝かせて駆け寄ってくる。

 「ディディ様! すごいです! カッコ良かったです! おれもディディ様みたいになりたいです!」
 せやろ?(ドヤァ……)
 ドヤ顔をしている私の傍で、店をボロボロにされた店主のおぢさんがメソメソ泣いていたけど、そこはアリアがブラックカード(紅龍様の)を取り出し、エエ声で告げた。

 「商品は全て買い取る。(師父が)店の修理費も全額請求してくれ。(師父に)支払いは一括で(師父へ)」

 店主のおぢが天使の笑みになっていた。
 紅龍様に怒られそうな気がするけど、アリアや茨鬼君の評判が悪くなるより良いわよねっ♥

 なーんてやりながらショッピングを楽しんで()いたのに。

 ユリらを撃退してしばらくの後、いきなり後ろから抱きしめられたのだ。

 ファッ!!??

 茨鬼君がこんなことするわけないし、アリアか! と思い、照れ隠しで振り返りながら殴る。

 「もー! 何するのよアリア! 気持ちいいじゃない!」

 思いっきりアッパーカットをキメてから気づいたけど、アリアじゃなかった。
 アリアは店のわんこにお手をさせて遊んでいて「私は此処だ」と目をぱちくりしている。
 誰だと思って殴った相手を見ると、司教服を着ていることから、職場(福音教)の上司関連だと察した。
 や、やばっ……!

 しかし相手は殴られながらも穏やかな笑みを浮かべた中性的な容貌の青年で、長い金髪を三つ編みに結っており……ていうか、こいつ、福音教の上層部の一人のウルボラ司教という変態だったわ!! 思い出した思い出した!!

 そう『変 態』なのだ。

 この世の美しいもの(自分含め)をこよなく愛し、しかも美しいものは全てワタシのモノ♥とか思ってるイカレポンチで、マフアク作中でもユリを何度も攫ってはガルーやサングレに凄惨な目に遭わされていた。

 ウルボラは私に顎を殴られながらもにこやかに使づいてきたけど、どんな美形でも相手の了承なしにハグとか、ふざけないでよ! セクハラ行為がイケメン無罪になると思ったら大間違いよ!! 有罪有罪!!

 しかしディディとは担当地区は違うものの、上司であることに変わりはない。
 だから『セクハラ男は×ね!』と看板(鈍器)で殴るわけにもいかない。

 そもそもなんでこいつが今ここに出てきてるわけ?

 茨鬼君をけしかけるわけにもいかず、迷っていると顎をクイッとされた。あ?(威嚇)