その茨鬼君の発言に、彼がどんな扱いを受け続けて生きてきたのかを改めて感じて胸が痛くなった。
もしも私が20年も眠らなければ……いや、それだけ眠るハメになったのは、ユリ公が手抜きしたからだろうから(紅龍様は即治療完了してるのに私は20年の時間差)ユリに責任求めてもいい気がしてきたな、うん。男相手にしか本気出さないユリ公め。
……けど、茨鬼君本人に悲壮感が無いのか、直ぐにケロッとしてしまうので、どう接したらいいかわからない。
とりあえず、アリアの子供の時みたいに美味しいものでもいっぱい与えれば~と、安直に考えた私は屋台で焼き串やらパンやら買ってきて茨鬼君にあげた。
しかし……。
「ディディ様、毒見ですか!? おれ、頑張りますねッッ!」
ち、違う! キミに人の心を取り戻してもらいたいだけなんだ!
そう思っても、一口食べてから茨鬼君は頷いた。
「うん! ディディ様! 毒は入ってませんでしたよ! だいじょぶです! おれ、ボスの元で356種類の毒物を体験しましたから、間違いないです!」
紅龍様ァァァアアアア!!?? こんな小さい子に非道すぎません!?
ドン引きしたけど、紅龍様って一度懐に入れた相手にはガチで執着するから、もしかして私に執着を……!?
それは嬉しいけど、罪なき子供をいつまでも冷遇してボコボコにしてる推し達を見るのは辛い。
マフィアだから凡人の常識なんて通じねぇんだよと言われればそれまでだけど……。
どうすれば紅龍様達の態度が変わるのか、どうすれば茨鬼君を修羅道から人道に戻せるのかと考えていた私の眼前で、怯えていた町の人々が歓声を上げだした。
「聖女・ユリ様!」
「ユリ様がいらっしゃったぞ!」
「聖女様ぁぁあぁああああああぁああああ!」
あ? 性女ユリ?(威嚇)
福音教の騎士に守護られながら道のド真ん中を歩いて登場したユリは、マフィアクターのゲーム画面の姿と同じく、愛らしい姿に成長していた。
しかし中の人が違う所為で、聖女の衣装は露出がドぎついし、フリフリとリボンがついてて色もセンスも壊滅的なのに、主人公補正効果で清楚な衣装に見えるのか、町民からスルーされている。
く、くそっ! これが中の人もちゃんと聖女なら、きっと可愛いスチルだろうに!!
ユリはモブ達に手を振りながら得意げに歩いていた。
「みんな~♪ユリだよぉ~! 元気にしてるぅ~?」
アイドル気取りか! とツッコミたくなる甘ったるい声で呼びかけていたユリが、此方の存在に気づくと、ぴょこんと飛び跳ねた。なんだその殴りたい動きは。
「あ~! アリアっちと、ファンディスクで追加実装された、茨鬼きゅんだぁ~! ラッキー!か~わ~い~い~!」
そう叫びながら走ってくるユリ。
茨鬼君が追加実装キャラと聞き、私は納得がいった。
そっかそっか! FDのコか~!
紅龍様を落とせてなかったから、FDまで手が出せてなかったのよ~!!
しかしユリは私が見えていないみたいにアリアや茨鬼君に駆け寄ろうとしたので私がズイッと進み出る。
ユリの顔が曇ったけど、構わないわ!
「ちょっとユリ! 私の復活だけよくも20年もかけてくれたわね! お陰様で時代に置いてかれてるわよ! ありがとう!」
嫌味たっぷりに話しかけると、ユリが首をこてんと傾げた。殴りたい動き2期!
「えへへ~。やっぱり、ユリより年 上 す ぎ る 相手じゃ聖女パワーが伝わりにくいみたいってゆ~かぁ? そもそも悪女さん、目が覚めてもユリに挨拶も何も無かったから、目が覚めたのをユリ知らなかったんだけどぉ(正論)ユリが死ぬほど頑張った成果が出て、良かったですぅ~! 喜んでくれる人、ユリ以外にいたなら良かったですねっ☆あ、でも町をプラプラしてるってことは誰からも……くすっ♪ か~わ~い~そ~お~!」
しばくぞ!!!!
さっきまで半裸の男×3に迫られて、紅龍様にジャンピングハグされてたわ!!
しかしユリの腹立つ台詞と動きに騎士達は兜の隙間から涙を流しながら感動していた。
「おぉ……! ユリ様! なんて謙虚で清らかな……!」
「流石は我らが聖女!」
さっきの台詞のドコが謙虚やねん! と思うけど、中の人がイヤな奴でも外の人の補正効果が強すぎて、騎士達が私に説教してきた。
「それに引き換え、シスター・ディディ! 汝は何をしていたのだ! 担当の教会をマフィアの巣窟にした上に、20年も昼寝した挙句、聖女様に無礼千万の不始末!」
「マフィアのボスの愛人になったとか、同志アリアと乱痴気騒ぎをしているとかいう不埒な噂が絶えぬが、汝も聖女ユリ様を見習って……へぶし!!」
最後まで聞き終える前に騎士Bの兜を壊れた看板で殴っていた。良い音したわぁ~!
すかさすアリアがショットガンを取り出し、茨鬼君が「ディディ様! この無礼者を殺しますか? 殺しますか!?」と拳を鳴らしていたので、私は吠えた。
「ちがーーう!!」
ビクッ! とするアリアと茨鬼君に私は持論を展開する。
「ムカつく奴を他人に殴らせて気持ちよくなれるわけないでしょ!! 自分の拳でボコボコに処すからスカッとするし、きんもちいい~のよ! いいからお子様は黙ってなさい!」
二人がコクコク頷く中、私はユリの守護騎士の兜に看板で殴打していた。
「あら、ごめんなさい! 兜に蜂が! アブが! ユスリカが!!」
騎士達が「いや、さっきボコボコに殴るとか……」と言い出したので、私は看板を放り捨てると、スカートの裾をちらっと捲って、悪女特有の『お色気攻撃』へとシフトする。
「いやだ、わたくしったら、福音教の使徒という身でありながら、はしたないですわ……よよよ」
ウソ泣きをすると、騎士達はチラ見えする生足に釘付けになって硬直している。
ユリがグヌヌしてたけど、おーっほっほっほ! ざまぁざまぁ!
聖女ポジでは絶対に使えない、悪女だからこその秘技よ!!
これだけ性格が悪くても『いや、だって私、悪女ですから中身が腐ってて当然ですし?』で通ってしまうんだな! これが!
もしも私が20年も眠らなければ……いや、それだけ眠るハメになったのは、ユリ公が手抜きしたからだろうから(紅龍様は即治療完了してるのに私は20年の時間差)ユリに責任求めてもいい気がしてきたな、うん。男相手にしか本気出さないユリ公め。
……けど、茨鬼君本人に悲壮感が無いのか、直ぐにケロッとしてしまうので、どう接したらいいかわからない。
とりあえず、アリアの子供の時みたいに美味しいものでもいっぱい与えれば~と、安直に考えた私は屋台で焼き串やらパンやら買ってきて茨鬼君にあげた。
しかし……。
「ディディ様、毒見ですか!? おれ、頑張りますねッッ!」
ち、違う! キミに人の心を取り戻してもらいたいだけなんだ!
そう思っても、一口食べてから茨鬼君は頷いた。
「うん! ディディ様! 毒は入ってませんでしたよ! だいじょぶです! おれ、ボスの元で356種類の毒物を体験しましたから、間違いないです!」
紅龍様ァァァアアアア!!?? こんな小さい子に非道すぎません!?
ドン引きしたけど、紅龍様って一度懐に入れた相手にはガチで執着するから、もしかして私に執着を……!?
それは嬉しいけど、罪なき子供をいつまでも冷遇してボコボコにしてる推し達を見るのは辛い。
マフィアだから凡人の常識なんて通じねぇんだよと言われればそれまでだけど……。
どうすれば紅龍様達の態度が変わるのか、どうすれば茨鬼君を修羅道から人道に戻せるのかと考えていた私の眼前で、怯えていた町の人々が歓声を上げだした。
「聖女・ユリ様!」
「ユリ様がいらっしゃったぞ!」
「聖女様ぁぁあぁああああああぁああああ!」
あ? 性女ユリ?(威嚇)
福音教の騎士に守護られながら道のド真ん中を歩いて登場したユリは、マフィアクターのゲーム画面の姿と同じく、愛らしい姿に成長していた。
しかし中の人が違う所為で、聖女の衣装は露出がドぎついし、フリフリとリボンがついてて色もセンスも壊滅的なのに、主人公補正効果で清楚な衣装に見えるのか、町民からスルーされている。
く、くそっ! これが中の人もちゃんと聖女なら、きっと可愛いスチルだろうに!!
ユリはモブ達に手を振りながら得意げに歩いていた。
「みんな~♪ユリだよぉ~! 元気にしてるぅ~?」
アイドル気取りか! とツッコミたくなる甘ったるい声で呼びかけていたユリが、此方の存在に気づくと、ぴょこんと飛び跳ねた。なんだその殴りたい動きは。
「あ~! アリアっちと、ファンディスクで追加実装された、茨鬼きゅんだぁ~! ラッキー!か~わ~い~い~!」
そう叫びながら走ってくるユリ。
茨鬼君が追加実装キャラと聞き、私は納得がいった。
そっかそっか! FDのコか~!
紅龍様を落とせてなかったから、FDまで手が出せてなかったのよ~!!
しかしユリは私が見えていないみたいにアリアや茨鬼君に駆け寄ろうとしたので私がズイッと進み出る。
ユリの顔が曇ったけど、構わないわ!
「ちょっとユリ! 私の復活だけよくも20年もかけてくれたわね! お陰様で時代に置いてかれてるわよ! ありがとう!」
嫌味たっぷりに話しかけると、ユリが首をこてんと傾げた。殴りたい動き2期!
「えへへ~。やっぱり、ユリより年 上 す ぎ る 相手じゃ聖女パワーが伝わりにくいみたいってゆ~かぁ? そもそも悪女さん、目が覚めてもユリに挨拶も何も無かったから、目が覚めたのをユリ知らなかったんだけどぉ(正論)ユリが死ぬほど頑張った成果が出て、良かったですぅ~! 喜んでくれる人、ユリ以外にいたなら良かったですねっ☆あ、でも町をプラプラしてるってことは誰からも……くすっ♪ か~わ~い~そ~お~!」
しばくぞ!!!!
さっきまで半裸の男×3に迫られて、紅龍様にジャンピングハグされてたわ!!
しかしユリの腹立つ台詞と動きに騎士達は兜の隙間から涙を流しながら感動していた。
「おぉ……! ユリ様! なんて謙虚で清らかな……!」
「流石は我らが聖女!」
さっきの台詞のドコが謙虚やねん! と思うけど、中の人がイヤな奴でも外の人の補正効果が強すぎて、騎士達が私に説教してきた。
「それに引き換え、シスター・ディディ! 汝は何をしていたのだ! 担当の教会をマフィアの巣窟にした上に、20年も昼寝した挙句、聖女様に無礼千万の不始末!」
「マフィアのボスの愛人になったとか、同志アリアと乱痴気騒ぎをしているとかいう不埒な噂が絶えぬが、汝も聖女ユリ様を見習って……へぶし!!」
最後まで聞き終える前に騎士Bの兜を壊れた看板で殴っていた。良い音したわぁ~!
すかさすアリアがショットガンを取り出し、茨鬼君が「ディディ様! この無礼者を殺しますか? 殺しますか!?」と拳を鳴らしていたので、私は吠えた。
「ちがーーう!!」
ビクッ! とするアリアと茨鬼君に私は持論を展開する。
「ムカつく奴を他人に殴らせて気持ちよくなれるわけないでしょ!! 自分の拳でボコボコに処すからスカッとするし、きんもちいい~のよ! いいからお子様は黙ってなさい!」
二人がコクコク頷く中、私はユリの守護騎士の兜に看板で殴打していた。
「あら、ごめんなさい! 兜に蜂が! アブが! ユスリカが!!」
騎士達が「いや、さっきボコボコに殴るとか……」と言い出したので、私は看板を放り捨てると、スカートの裾をちらっと捲って、悪女特有の『お色気攻撃』へとシフトする。
「いやだ、わたくしったら、福音教の使徒という身でありながら、はしたないですわ……よよよ」
ウソ泣きをすると、騎士達はチラ見えする生足に釘付けになって硬直している。
ユリがグヌヌしてたけど、おーっほっほっほ! ざまぁざまぁ!
聖女ポジでは絶対に使えない、悪女だからこその秘技よ!!
これだけ性格が悪くても『いや、だって私、悪女ですから中身が腐ってて当然ですし?』で通ってしまうんだな! これが!



