とにかく、茨鬼君にとって人命が軽すぎた。
口癖が『殺しますね!』なので、何度も止めねばならない。
紅龍様からお買い物用にカードを貰ったんだけど(ブラックカード!)、貧乏性の私が街で少しでも『これ、高いなぁ~』とでも言おうもんなら、茨鬼君が目を爛々とさせながら飛んできて店主の胸倉を掴み上げるのだ。
そして『ディディ様! ご安心ください! この方を殺せば無料ですよ!』と笑顔で言ってくるので、その度に人の世の掟を説かねばならなかった。
幸いなことに茨鬼君の人間分解スキル(『影無者』というらしい)は紅龍様が呪術で封じているので危険はないようだったけど……。
もしかしなくても、とんでもないお荷物を抱え込んでしまったのではないか!?
後悔しても時既におすし。
壁に向かって溜息を吐く私に、ついてきていたアリアが心配してくれた。
(ガルーとサングレとアリアらの内、誰が護衛2でついていくかで揉めだしたので、ジャンケンで決めてもらった)
「シスター・ディディ、困っているのか」
「う~ん。困っているといえば困っているけど、どちらかと言うと、どうしたらいいかで迷っ……」
言いかけた私の眼前でアリアが長銃を取り出し、茨鬼君に向かって発砲し……ちょぉぉおお!?
茨鬼君の頭部を狙った弾丸! でも茨鬼君は凶弾をお店の看板を盾にして弾いた。
更にアリアが2発、3発と発砲する。
それも茨鬼君は避けてゆく。砕け散る看板。逃げ惑う町の人々。
阿鼻叫喚の事態に陥っ……やめろぉぉぉぉぉおおおおおおおお!!!!
全弾避けた茨鬼君を見たアリアがムッとした表情で告げる。
「かわすな。ちゃんと当たれ。そして死ね」
ヘッドショットしておいて、この態度!!
しかし茨鬼君は両手を握りしめて力説しだした。
「駄目です! アリア先輩! おれ、ボスの大切なひとを守る役目を任せられたんです! 今死んだら、ボスの大切なディディ様をお守り出来ないじゃないですか!」
ボスの大切なディディ様ってもっと言ってもっと言って!
……じゃなくて! アリアは排莢をこなすと、また茨鬼君に照準を合わせる。
茨鬼君も好戦的な瞳でアリアを睨むと、猫のようにしなやかな動きで身構えて笑う。
それから茨鬼君が私を見た。
「ディディ様! そういえば、ボスからアリア先輩は殺すなって言われてなかったので、護衛任務の邪魔になるなら殺していいですか?」
いいわけないやろがい!! この場に常識と倫理を併せ持ったキャラはおらんのか!!
私は死合いを始める二人を怒鳴りつけた。
「止めなさーい! お店と近隣の人に迷惑でしょ! アリア! 年下をイビるんじゃありません! 茨鬼君も少し落ち着いて! 手の平に人の字とか書いて深呼吸しようか!」
茨鬼君が「わかりました! ディディ様!」と手の平に『殺』の字を書いている間にアリアの銃を取り上げる。
すると、アリアは台風がきて散歩に連れてってもらえない柴犬みたいな顔でグヌヌしていた。
「……シスター・ディディ、私は貴女の障害となるものは全て排除したいだけだ……」
「はいはい、その気持ちはありがたいけど、街中で発砲はダメよ! 後輩も可愛がってあげてね!」
しょんぼり顔のアリアの頭をナデナデすると、アリアはポニーテールの先端を犬の尾のようにブンブン振っていた。無表情だけど頭を撫でられて嬉しいみたいだ。
それを見た茨鬼君が不思議そうに目を瞬かせている。
「……なんでアリア先輩は、狙撃を失敗したのにディディ様に褒められてるんですか? おれが同じ失敗をしたら、ボスやガルー先輩、サングレ先輩に気絶するまで殴られるのになぁ……」
口癖が『殺しますね!』なので、何度も止めねばならない。
紅龍様からお買い物用にカードを貰ったんだけど(ブラックカード!)、貧乏性の私が街で少しでも『これ、高いなぁ~』とでも言おうもんなら、茨鬼君が目を爛々とさせながら飛んできて店主の胸倉を掴み上げるのだ。
そして『ディディ様! ご安心ください! この方を殺せば無料ですよ!』と笑顔で言ってくるので、その度に人の世の掟を説かねばならなかった。
幸いなことに茨鬼君の人間分解スキル(『影無者』というらしい)は紅龍様が呪術で封じているので危険はないようだったけど……。
もしかしなくても、とんでもないお荷物を抱え込んでしまったのではないか!?
後悔しても時既におすし。
壁に向かって溜息を吐く私に、ついてきていたアリアが心配してくれた。
(ガルーとサングレとアリアらの内、誰が護衛2でついていくかで揉めだしたので、ジャンケンで決めてもらった)
「シスター・ディディ、困っているのか」
「う~ん。困っているといえば困っているけど、どちらかと言うと、どうしたらいいかで迷っ……」
言いかけた私の眼前でアリアが長銃を取り出し、茨鬼君に向かって発砲し……ちょぉぉおお!?
茨鬼君の頭部を狙った弾丸! でも茨鬼君は凶弾をお店の看板を盾にして弾いた。
更にアリアが2発、3発と発砲する。
それも茨鬼君は避けてゆく。砕け散る看板。逃げ惑う町の人々。
阿鼻叫喚の事態に陥っ……やめろぉぉぉぉぉおおおおおおおお!!!!
全弾避けた茨鬼君を見たアリアがムッとした表情で告げる。
「かわすな。ちゃんと当たれ。そして死ね」
ヘッドショットしておいて、この態度!!
しかし茨鬼君は両手を握りしめて力説しだした。
「駄目です! アリア先輩! おれ、ボスの大切なひとを守る役目を任せられたんです! 今死んだら、ボスの大切なディディ様をお守り出来ないじゃないですか!」
ボスの大切なディディ様ってもっと言ってもっと言って!
……じゃなくて! アリアは排莢をこなすと、また茨鬼君に照準を合わせる。
茨鬼君も好戦的な瞳でアリアを睨むと、猫のようにしなやかな動きで身構えて笑う。
それから茨鬼君が私を見た。
「ディディ様! そういえば、ボスからアリア先輩は殺すなって言われてなかったので、護衛任務の邪魔になるなら殺していいですか?」
いいわけないやろがい!! この場に常識と倫理を併せ持ったキャラはおらんのか!!
私は死合いを始める二人を怒鳴りつけた。
「止めなさーい! お店と近隣の人に迷惑でしょ! アリア! 年下をイビるんじゃありません! 茨鬼君も少し落ち着いて! 手の平に人の字とか書いて深呼吸しようか!」
茨鬼君が「わかりました! ディディ様!」と手の平に『殺』の字を書いている間にアリアの銃を取り上げる。
すると、アリアは台風がきて散歩に連れてってもらえない柴犬みたいな顔でグヌヌしていた。
「……シスター・ディディ、私は貴女の障害となるものは全て排除したいだけだ……」
「はいはい、その気持ちはありがたいけど、街中で発砲はダメよ! 後輩も可愛がってあげてね!」
しょんぼり顔のアリアの頭をナデナデすると、アリアはポニーテールの先端を犬の尾のようにブンブン振っていた。無表情だけど頭を撫でられて嬉しいみたいだ。
それを見た茨鬼君が不思議そうに目を瞬かせている。
「……なんでアリア先輩は、狙撃を失敗したのにディディ様に褒められてるんですか? おれが同じ失敗をしたら、ボスやガルー先輩、サングレ先輩に気絶するまで殴られるのになぁ……」



