繋いだ手が消える間際、紅龍様の指が私の手を強く握りしめた。
彼の見開いた瞳が滲み、震える唇が言葉を紡ぐ。
「お、前……」
驚きを隠せないといった風に私を見つめる紅龍様に私は涙まじりの笑顔で頷いた。
「大丈夫、ずっと一緒ですよ、紅龍さ……」
言いかけた私の後方からサングレの絶叫が轟く。
「しすたぁぁああぁああああああああ!」
振り返ると、ガルーとアリアがユリの腕を左右から掴み、サングレがユリの背中を押し、砂埃を舞い上げながらも引きずるように連行してきていた。
その姿に私は腕が肘まで消えた状態でバンザイして応える。
「キャー! ありがとう皆~! 早く早く! 紅龍様が胸板まで消えちゃってるから、早く治して!」
そう告げる私にガルーとアリアが思いっきりユリを紅龍様に向けて解き放った。
ユリは紅龍様に倒れ込みながらも絶叫する。そして直ぐに起き上がった。
「も~! ちょっとトイレでちこくしたぐらいで、ひーどーいー!」
この非常時にトイレ行っとったんかい!!
私が鬼の形相になりかけるも、紅龍様はユリが触れた位置から眩い光と共に部位再生が始まった!
こ、こいつ! 修行してなかった癖に! これが主人公(聖女)の補正効果か!
でも良かった! 間に合った――!!
しかし紅龍様は再生の途中でありながら、ユリの頭を掴んで私の方へ向けた。
「私の治療はもう善い! それより、ディディを早く!」
既に紅龍様の再生は足先まで終わっている。
だから次は私を治せと、見たこともないくらいに彼が焦っていた。(感動)
推しに心配されるって嬉しい……! 尊い! と泣きじゃくる私に、ユリが目を回して紅龍様の胸元に倒れ込ん……貴様! 私の推しの胸板でナニしてんのよ!!(嫉妬)
しかしユリは目をぐるぐるさせながら残酷な事実を告げた。
「ユリ、も~つかれたぁ~! さいせい、むりぃ~!」
……は?
皆の目が点になる。
そして次の瞬間、紅龍様だけでなく、ガルー、サングレ、アリアから怒号が飛び交った。
「おい! 貴様! 動け! 殺すぞ! 廃物!(役立たず)」
「手前! なにしてんだよ! おれの女が消えかかってんだろうが!」
「うわーん! しすたぁが、もう首だけになってるよぉぉぉぉおおおお!」
「おきろユリ! わたしの妻が転げまわっているだろう!」
しかしユリは座り込んで不貞腐れている。
「もーユリ、うごけないもん!」とか言ってるので、私はユリの足元で首だけで転がりながら叫んだ。
「ふざけんじゃないわよ! 推しが助かって私だけ消えるとか! 冗談じゃないわ――ッ!!」
皆が慌てているのにユリはグースカ寝始めているし!
それならユリも道連れだとか思ったわけじゃない。
じゃないけど、ユリの足に頭突きした時、私の視界は闇に落ちた。
ああ、消滅なら巻き戻るのもナシなんだ、なんて考えつつ……。
でもまぁ、紅龍様が無事なら良かった。
ガルー、お母さんの分も幸せになってね。
サングレ、泣かないでね。いつも大好きよ。
アリアは、しっかり者だけど無理しないでね。
なんて考えていた。
考えていたのに……。
まさか、目を覚ましたら、20年の時が経過していたなんて、信じられると思う……?
彼の見開いた瞳が滲み、震える唇が言葉を紡ぐ。
「お、前……」
驚きを隠せないといった風に私を見つめる紅龍様に私は涙まじりの笑顔で頷いた。
「大丈夫、ずっと一緒ですよ、紅龍さ……」
言いかけた私の後方からサングレの絶叫が轟く。
「しすたぁぁああぁああああああああ!」
振り返ると、ガルーとアリアがユリの腕を左右から掴み、サングレがユリの背中を押し、砂埃を舞い上げながらも引きずるように連行してきていた。
その姿に私は腕が肘まで消えた状態でバンザイして応える。
「キャー! ありがとう皆~! 早く早く! 紅龍様が胸板まで消えちゃってるから、早く治して!」
そう告げる私にガルーとアリアが思いっきりユリを紅龍様に向けて解き放った。
ユリは紅龍様に倒れ込みながらも絶叫する。そして直ぐに起き上がった。
「も~! ちょっとトイレでちこくしたぐらいで、ひーどーいー!」
この非常時にトイレ行っとったんかい!!
私が鬼の形相になりかけるも、紅龍様はユリが触れた位置から眩い光と共に部位再生が始まった!
こ、こいつ! 修行してなかった癖に! これが主人公(聖女)の補正効果か!
でも良かった! 間に合った――!!
しかし紅龍様は再生の途中でありながら、ユリの頭を掴んで私の方へ向けた。
「私の治療はもう善い! それより、ディディを早く!」
既に紅龍様の再生は足先まで終わっている。
だから次は私を治せと、見たこともないくらいに彼が焦っていた。(感動)
推しに心配されるって嬉しい……! 尊い! と泣きじゃくる私に、ユリが目を回して紅龍様の胸元に倒れ込ん……貴様! 私の推しの胸板でナニしてんのよ!!(嫉妬)
しかしユリは目をぐるぐるさせながら残酷な事実を告げた。
「ユリ、も~つかれたぁ~! さいせい、むりぃ~!」
……は?
皆の目が点になる。
そして次の瞬間、紅龍様だけでなく、ガルー、サングレ、アリアから怒号が飛び交った。
「おい! 貴様! 動け! 殺すぞ! 廃物!(役立たず)」
「手前! なにしてんだよ! おれの女が消えかかってんだろうが!」
「うわーん! しすたぁが、もう首だけになってるよぉぉぉぉおおおお!」
「おきろユリ! わたしの妻が転げまわっているだろう!」
しかしユリは座り込んで不貞腐れている。
「もーユリ、うごけないもん!」とか言ってるので、私はユリの足元で首だけで転がりながら叫んだ。
「ふざけんじゃないわよ! 推しが助かって私だけ消えるとか! 冗談じゃないわ――ッ!!」
皆が慌てているのにユリはグースカ寝始めているし!
それならユリも道連れだとか思ったわけじゃない。
じゃないけど、ユリの足に頭突きした時、私の視界は闇に落ちた。
ああ、消滅なら巻き戻るのもナシなんだ、なんて考えつつ……。
でもまぁ、紅龍様が無事なら良かった。
ガルー、お母さんの分も幸せになってね。
サングレ、泣かないでね。いつも大好きよ。
アリアは、しっかり者だけど無理しないでね。
なんて考えていた。
考えていたのに……。
まさか、目を覚ましたら、20年の時が経過していたなんて、信じられると思う……?



