なーんてシンミリしたけど、紅龍様が仮に万が一、聖女ならぬ性女ユリ萌えなんかになった日にゃあ解釈違いなので、刺し違えてでも目を覚まさせてみせるわ!(過激派)

 でも今は紅龍様の刺客を誘い出して始末する為にも、ユリを連れ回しておかなきゃ!
 (ちびっこ達には教会で待機してもらいました)

 とか考えていたら、ユリが「ふぇえ~ん。ユリ、お花摘みに行きたい~」と言い出した。
 おう、そこらへんで摘みな! と私は親指をクイッと立てて漢の発言でユリを促す。
 しかし流石に紅龍様が「なんで無駄に男前やねん! やべーだロ! 手洗いぐらい行かせてやれヨ!」と止めてきた。

 「え。ど、どうして……??」
 戸惑う私に紅龍様が額を押さえて溜息をつく。

 「ワタシの方が頭オカシイみたいな言い方するんじゃねーヨ! そもそも、オマエ、ワタシに対して過保護すぎなんだヨ! ワタシ、マフィアクター最強キャラだゾ? ラスボスでもあるんだし、簡単に消えるワケねーだロ!」
 「ちょ、死亡フラグ立てるの止めてくださいよ! ラスボスと死亡フラグって相性良すぎなんですよ!」

 そんな遣り取りをしている時だった。

 「死ねや! 紅龍――ッッ!!」

 物陰からフードをかぶった刺客が刃物を持って飛び出してき……危な――い!!
 私は迷わずに金属バットを背中から出して振りかぶる。
 黒服の皆さんがドン引きしていたけど、紅龍様に近づけちゃいけない! 何があろうとも!

 だがしかし、必死な私の真横を紅龍様が走り抜け、不審者の顎を華麗に蹴り上げた!

 不審者は弧を描いて吹っ飛ぶ……っていうか、推しのハイキックを彩る血しぶきが絵画のようで美しい~~……ッ!!

 私は返り血を浴びつつも感動に咽び泣きながら、紅龍様と同時にツッコミあっていた。

 「紅龍様! 不審者に近づいちゃダメですよ! 危ないじゃないですか!」
 「ド阿呆! 分解してくるヤツなら素手で襲ってくるだろうガ! ていうか、一般人の癖に生身の人間のドタマに躊躇なく鈍器振り下ろせるオマエが危ないワ!」

 すっごい怒られた。
 でも、推しの命がかかってるので私も退かぬ。媚びぬ。省みぬ。

 「そんなことありません! 全国のマフアク乙女は、推しのピンチの為なら、震える手で金属バットで会心の一撃を出しますから!(キリッ」
 「キリッじゃねーヨ! オマエ視点で世の女の常識を考えるナ! ワタシの知るオンナは、まずこういう時、震えて悲鳴上げるんだヨ!」

 紅龍様が指さした先には、腰を抜かして泣きじゃくるユリが居た。

 「ふぇええ~~ん! 怖かったよぉお~~!(チラチラ」

 そのユリの姿に、堅物な黒服の皆さんも頬が緩みかけている。聖女の好感度補正効果のようだ。ろりこんどもが!(吐き捨てるように)
 それは紅龍様も例外ではないのか、ユリ公を「もういいだロ。ガキは帰してやれヨ」と優しい。

 すかさず私も「こっ、怖かったです~! ぴょええん(裏声)」と、きゃぴるんしてみたけど、紅龍様はイヤそうに眉を寄せた。えっ……!?

 「ド阿呆! 返り血を浴びたバット握りしめてるシスターの発言に信憑性ないだろうガ!」
 「迸る熱い体液を顔にぶっかけてきたのは、紅龍様じゃないですか!」
 「なんで無駄にエロい言い方しとんねん! もうイイ! オマエ、早く教会に戻……」

 なんて、やりとりをしていた紅龍様の体が、突然、地面に崩れるように倒れ込んだのだ。