紅龍様の衝撃発言に私は呆然としていたけど、思い出す。

 「あ! そっか! 聖女ユリは小さい頃に迷子になったところをガルーとサングレに助けられるんですよね! 映画でもそこがクローズアップされてて……」

 私が名前を口にしたので、地面に絵を描いて遊んでいたガルーとサングレがクルッと振り返った。
 あ、何でもないので遊んでなさいね~。
 アリアも含めて三人の頭をよしよししてから紅龍様の元に戻る。

 紅龍様は顎に手をあてたまま、真剣な眼差しで考え込んでいた。

 推しの思案顔をブラウザを越えて拝めるなんて幸せ……♥
 紅龍様、まつ毛、なっが! とかデュフフしていたら、紅龍様が此方を見た。

 「おい、幼いユリとの出会いはワタシにもあるんだヨ」
 「あぁ、そういえばユリがガルーとサングレに逢う前に紅龍様にも逢うんですよね。ウラヤマねたましい……(ギリッ」
 「オマエ、ワタシと今、メッチャ会話してっだロ! 何で嫉妬しとんねん! そうじゃなくてだナ、此処にオマエらを纏めて連れてきたのは、運命力の調査だヨ」

 どういうことだってばよ……と思っていると、紅龍様が説明してくれた。

 「今日のこの日、この時間にワタシとガルーとサングレが居れば、ユリが現れるハズだヨ。そうすれば……」
 「あ! 出会いイベントの日だったんですね! そうなると、ゲーム通りにガルー達がユリと恋に落ちるわけで……! なーるほどっ!」

 私が拳をポンと叩くと、紅龍様は目を細めてフンと鼻を鳴らす。

 「ワタシはロリガキにキョーミねーからナ。運命力なんざ効かないだろうが、ガルーどもは、これで元のあるべき姿に戻るだロ」
 「確かに! 私にベッタリな状態から本来の状態に戻りそうですね! 良かった~!」

 ガルーらがユリとくっついてくれるなら、この子達が悪の道に進んだとしても人の道は踏み外さないだろう! 安心だ~!
 そうしていると紅龍様が私を観察するように凝視していた。

 「あれ? 紅龍様? どうしました? 私の顔に何かついてます?」
 小首を傾げて問いかけると、紅龍様は少しホッとしたように首を振った。

 「いや、何でもないヨ。流石のお前も、幼児相手に発情するような女じゃなくて安堵しただけだヨ」
 「な、なんですかソレ! そもそも私、紅龍様一筋って言ってるじゃないですか~!」

 もー! と、紅龍様の腕をぽかすかぶつと、彼は子供みたいに笑った。
 その自然な笑顔にドキッとしてしまう。

 も、もしかして紅龍様、ガルーたちと仲が良い私に嫉妬してくれたのかな? なんて自惚れがむくむくと……!

 していたら、腰に凄まじい衝撃が走った。

 「ぬぐぅぉあッ!!」

 思わずオッサンみたいなダメージボイスが出たけど、そのまま地面にズベシャアと倒れた私。
 直ぐにサングレ、ガルー、アリアらが駆け寄ってくれた。

 「うわーん! シスターがピンボールみたいにふっとんだー!」
 「おい! しっかりしろよ! 地面からすいちょくにとんでたぞ!」
 「シスター・ディディ! しろめをむいて泡をふいているのか!」

 子供たちが事態を無駄に詳細に泣き叫ぶ中(やめろぉぉぉおおお!)紅龍様が私を抱き起こす。

 「オマエ、信じられないくらい野太い声が出てたゾ!」
 「じ、自分でも思ったのでツッコまないでくださ……い……」

 息も絶え絶えな私が顔を上げる。
 その先には、パンを咥えた幼女が「ちこくちこく~!」と足踏みしていた。