しかし、マフムビで紅龍様がハブられたのは、彼の扱いが難しいという面もあるだろう。

 紅龍様は『唯一、自分にだけ向けられる愛』を欲している。
 だから劇場版みたいなハーレム展開では『混ぜるな危険』状態で殺し合いに発展してしまう。

 そもそも紅龍様というキャラ自体がゲーム本編ではディディの元を離れたガルー、サングレ、アリアを引き取って殺しの術を教えるという、一種の師弟関係でもある。

 マフィアに所属したガルーとサングレにとって紅龍様は上司、福音教の使徒となったアリアにとっては敵対者となるわけなんだけど……。
 ユリを巡って師弟が殺し合うのがマフィアクターの醍醐味とされている。
 (みんな仲良くしてほしいんだけどな~)

 しばらく子供たちに武術を教えていた紅龍様が、ガルーとサングレを放り投げて告げた。

 「よ~し、餓鬼ども、たまにはメシでも奢ってやるカ!」

 わ~い♪と喜んだのは私と、食べるの大好きなアリア(無表情)だけだった。
 ガルーとサングレは起き上がって不貞腐れている。

 「ほれたおんなにメシをおごるのは、オレだ。手前のカネでメシ食ってる、おせっかい女なんか見てられっか」
 「そーだよ! シスターはマフィアのおぢさんのキタナイおかねなんかでゴハンたべたりしないんだからね!」

 ちょ、やめっ! 

 と止める間もなく、二人は紅龍様からガンガン殴られて倒れていた。
 懲りなさいよアンタたち! 
 頭を打楽器にされたいんか!!

 そんなこんなで紅龍様の奢りで、彼の行きつけのお店に向かったわけだけど……。

 落 ち 着 か な い。

 赤い提灯や華やかな装飾が並ぶレストラン内では、壁一面に黒スーツのイカツイおぢ達が居並ぶ&店の外も黒スーツでいっぱいだ。
 紅龍様の護衛の方々らしいけど、その緊迫した空気に私も、ちびっこたちも円卓を囲みつつソワソワキョロキョロしっぱなし!

 紅龍様だけは慣れてるのか、煙管を咥えて上下させたままメニューを見ていた。
 微動だにしない私たちに気づいた紅龍様が顔を上げる。

 「どーしタ? 好きなモン注文しろヨー? 食わねーと育たねーからナ!」

 そう言われましても食欲が引っ込む光景です。
 なーんて思ってると、紅龍様がニヤリと笑った。

 「……まぁ、ビビって食えなくなるような肝っ玉の小さいヤツじゃあ、無理かもナ!」

 それにちびっこたちがピキッたらしい。

 サングレが手を挙げた。

 「ぼく、みーとぼーるぱすた!」

 次にアリアが両手を上げる。

 「わたしは、ぽとふ。じゃがいも多めで」

 ガルーだけが沈黙していたので、私はハッと気づく。

 そういえば、オフィシャルファンブックにガルーの好物はバニラアイスって書いてたわよね。
 趣味も『ビリヤード・煙草を吸いながら食べるバニラアイス』とか、やたらバニラアイス推しされていた。
 コラボカフェでも『ガルーのバニラアイス』とか出てたし(笑)

 でも大人の時は開き直ってスチルでパクパク食べてた癖に、今は恥ずかしがって言えないのね!

 「仕方ないわね~! この子にはバニラアイスで、私は~」

 と自分の好物と共に注文してあげたのに、ガルーから「よけいなこと、すんじゃねぇ! おせっかい女!」と怒られた。ふふふ。そういうところ、子供っぽいじゃない~♪

 それで私は調子にのって、紅龍様の好物も思い出して問いかけた。

 「紅龍様は、鳳梨酥(パイナップルケーキ)ですよね?」

 それを聞いた紅龍様が口角を上げる。