紅龍様が拳を握りしめて熱弁を振るう。

 「当たり前だろーガ! ワタシ、ガルーやサングレみたいな餓鬼共相手に股を開きまくったクソビッチに惚れるほど、オンナに飢えてねーヨ!」
 「ちょ、紅龍様、ちょ」
 「ワタシは一途なオンナが好きなんだヨ! ユリとかいうビッチなんか有り得んやろがい!!」
 「わ、わかりました! わかりましたから、子供たちの前でビッチとか股とか言わないでください!」

 早速サングレとアリアが服の袖を左右から引っ張ってきた。

 「シスター・ディディ! 『くそびっち』ってどうゆうイミですか~?」
 「シスター、またをひらくとは、どういう状況なんだ?」

 ひぃぃぃいいいい! 天使に育成していたサングレがドSな攻として覚醒しかねない&アリアはムッツリスケベな攻になりかねないわぁああああああ!

 とにかく子供たちは純粋培養かつ善良に育ててますので、放送禁止用語とか止めてくださいね! 
 そう紅龍様に訴えるも、彼は頭を掻いて溜息をつく。

 「あのナ~……。言い辛いんだが、オマエの努力、多分ムダだヨ」
 「え」

 問いかける私に紅龍様が屈んで子供たちの目線に合わせる。

 「おい、小僧共。オマエら、将来は何になりたいか目標はあるカ?」

 するとガルー、サングレ、アリアらが同時に手を挙げて熱く語りだした。

 「おう。マフィアのぼすになって、そいつをオレのオンナにする」

 「ダメだよ! シスターは、ぼくのおよめさんにするの! ぼく、ゲームをかんがえるのが得意だから、カジノをつくってオカネをいっぱいためて、シスターになにふじゆうないくらしをしてもらうんだ~!」

 「シスターは福音教のニンゲンだから、福音教のトップにたって、きょうだんをうちがわからシハイする。信者からまきあげたカネで、わたしの妻になるシスターの像をつくる」

 『将来の進路希望』
 ・ガルー → マフィア
 ・サングレ → 賭博王
 ・アリア → 汚職聖職者

 うぉぉぉおおおおおおおおおいいいいいいいい!?!?!?!? 

 咆哮を上げる私に全員がビクッとしていたけど、何がどうしてそうなった!!
 困惑する私に紅龍様が肩を叩いた。

 「以前にも話したがナ、【マフィアクター】は、悪党どもが己の矜持ゆえに悪になる話ダ。だから、オマエがどれだけコイツらを善人に育てようとしても、どだい無理ゲーなんだヨ」

 「そんな重要なこと、早く言ってくださいよ! ここまで育成しておいて無駄とか! 何ですかそのクソゲー!」

 「クソゲーとかホントのこと言うなヨ! 一応、舞台化も映画化もしたんだヨ!! 映画にはワタシと珠天、居なかったけどナ!」

 オマケ話だけど、マフィアクターの映画、通称マフムビではガルー(28)とサングレ(26)のツートップが主役としてユリを取り合う話だった。
 で、ワリを食った紅龍様(45)と珠天先生(45)はハブられたのだ。

 「あぁ……あの、おっさんずハブとか言われたマフムビですね……」
 「……」ピキッ

 ピキッた紅龍様にワンパンされかけたが、子供たちが紅龍様の腕や腰にしがみついて止めてくれた。

 あ、ありがとう! あなたたち、進路希望はともかく良い子に育ってるわ!!(涙)