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 「……ということが昨晩あったんです。ガルーのこと、何とかなりませんかね~紅龍様」

 私は様子見に来てくれた紅龍様に皆で作った焼き芋を振る舞いつつ、ガルーについて相談していた。
 紅龍様は「芋かヨ!」と文句言いつつも、二つも三つも食べている。
 (推しが健啖家だと嬉しい女心)

 そんな紅龍様は四つめの焼き芋を手に取りながら、目を細めて呟く。

 「……オマエ、ちょっと危ういヨー」
 「えっ? 何がですか? 紅龍様のお腹の方が危うい気がしますけど……」
 「うるせーナ! ワタシは食っても太らねーんだヨ!」

 そんな紅龍様は皮を剥いた芋にかぶりつき、犬歯で色っぽく食い千切る。

 「オマエ、今回の巻き戻りではサングレもアリアも、うまく手懐けたヨ。でも、ガルーは違ウ。アイツ、ワタシと同じ狂犬ネ」
 「????」
 ワケがわからないので黙って聞いていると、紅龍様が指さしてきた。

 「首輪つけて懐かせたと思っても、ガルーもワタシも、誰の下にもつかないネ。アイツ、女の好みがワタシと同じヨ。面白い女であるうちは愛するヨ。でも、そうじゃなくなれば喰い殺すネ。オマエに興味と関心がある内は、愛嬌ふりまいてるパンダのふりしてるんだヨ。一皮剥けば熊なんだからヨー」

 なるほど、わからん。
 とりあえず何か怖いこと言ってるな~ってのはわかった。

 「急に怖いこと言うの止めてくれません? マフィアクターはホラゲじゃないので……」
 「茶化すんじゃねーヨ! とにかく、何でも思い通りにいくとか調子のって巻き戻るんじゃねーゾ! 結局、運命には勝てねーんだからナ! まったく! ワタシの異能、無限残機みたいに使いやがっテ!」

 紅龍様に顔面に芋の皮を投げつけられたけど(ありがとうございます! ご褒美です!)確かに紅龍様の女の好み、変ってるのよね~。

 世界一の美女も世界一の醜女も『等しく価値あるネ』って愛人にしちゃうかわりに、飽きたらどんな女性であってもポイする、いわゆるドクズの部類である。

 でもいつまでも自分をワクワクさせてくれる女には一途に永遠に追いかけるっていう、いわゆる『いつまでも伴侶に恋していたいタイプ』とでもいうのだろうか。
 そんな危険な魅力が紅龍様にはある。

 けど、ガルーにはあるっけ?

 は、八歳児だからわからん……!

 ガルーは一番最初に落としたから、ガルールートはウロ覚えなのよね! くっそう! 

 とギリギリしていた私は、紅龍様が言っていた『運命には勝てない』をまざまざと体感するのだった。


 ガルーのお母さんが、亡くなったのだ。