アリアは一度、ディディの教会に引き取られたけど、父親が襲撃してきたときに、身の危険を感じたディディによって父親に差し出されてるのよね……。

 結局、父親がアリアを売り飛ばそうとして暗黒街のボスの紅龍様に見つかってボコボコにされ……って流れだったけど、アリアからすれば、あっちこっちを大人の都合でタライ回しにされて傷つけられた状態だ。

 そんなこと、ディディは許しても中の人の私は絶対に許さないんだからね!!!!

 私は一番しっかりしているガルーに電話で通報するように合図を送る。
 そしてサングレにはアリアを一番安全な場所に連れていって一緒に隠れていてと頼んだ。

 ガルーとサングレは頷いて、直ぐに動いてくれた。
 しかしアリアだけは動かず、不思議そうに問いかけてくる。

 「……どうしてだ。わたしを父にひきわたせば、さわぎは収まるのに」

 サングレが手を引っ張ってるのに動かないから、私はドアを手と片足で押さえながら(鍵がしょぼい)叫んだ。

 「そんなこと、するわけないでしょ!」
 「なぜだ」
 「何故って!? 子供は大人が守ってあげるものなの! いいからあなたは大人しく、守られてなさい! もう何も心配しなくていいからね!」
 「……!」

 アリアがビクッと震えた。
 それからサングレ、ガルーと共に奥へと走ってゆく。
 それと同時に教会の扉が乱暴に開けられた。

 「わあ!」
 悲鳴を上げて倒れちゃったけど、何とか半身を起こして相手を睨む。
 眼前にはアリアが成人した立ち絵そっくりの美男子が立っていた。
 ただし酒瓶を片手に持っているし、明らかに泥酔している……。

 その残念な美形は酒瓶を私につきつけて怒鳴った。

 「おい! アリアをどこに隠した!」
 「かっ、かか隠してないですし! ここ教会ですし!」

 つい相手の怒気にビビって噛んでしまったけど、大丈夫……! 
 最悪、私にはチート(巻き戻り)があるから! 

 なんて舐めていたけど、やはり大人の男がキレ散らかしてるのは怖い!

 怒号が飛び交い、今にも酒瓶で頭を割られそうで恐怖してしまう。
 死んでも巻き戻れるとはいえ、じゃあ死ぬの怖くないかかって言われたら、怖いもんは怖い。

 でもアリアを引き渡して生き延びるなんて、その怖さより嫌だと思った。
 そう考えていると、男が酒瓶を近くの座席に叩きつけ、怒鳴り散らす!

 「おい! さっさとアリアを連れて来いって言ってんだろうがブス!」

 ……あ?(ピキッ

 女の子に言ったら殺され必須ワードを言ったな?

 ブチ切れた私の怒りは恐怖を塗りつぶす。
 通報が間に合うまで時間稼ぎをしていた。

 「神様の御前ですから、行動を慎……うわっ! ちょ! 酒瓶振り回さないでよ! 打ちどころが悪かったら巻き戻るんだからね!」

 男の大振りな攻撃を避けて逃げ回りつつも、刺激しないようにしたつもりなのに、なんか上手くいかない。

 そして私が長いスカートに躓いて転んだ時、男に顔を覗き込まれた。
 男は私をジロジロ見てから呟く。

 「フン……? よく見たら随分と良い女じゃねぇか? アリアよりも高く売れるな……」