「出来た出来た。ほら、沢山食べていいから」

 そう言って、今日突然現れた人間は、俺の家で、机に料理を並べてくる。

 女の人はクロエというらしい、俺の家のすぐ近くにテントを張った後、火を起こして、料理を手早く作り、俺の家の机にせっせと料理を運んでくれた。

「好きなだけ食べていいから」

「おかわりもあるから!」

 そう言って、俺の向かいに座り、人間は笑う。

 机に置かれた料理たちを見ると、野菜を炒めたもの、煮込んだ汁。魚を焼いたものが並んでいた。どれも手が込んでいて、美味しそうだと思う。

 こんな風に、料理を作ってもらうのは初めてだ。

 俺は生まれつき、魔力の濃度が獣に近かった。

 両親は、俺を部屋から絶対に出さず、病弱で、足も悪い子供として村には説明していたらしい。少しでも魔力の濃度が薄くなるように、身体が弱くなるようにと、食事は十日に一度で、透明な何かが浮いている汁だった。

 でも俺の魔力濃度は日々増していった。両親の俺を見る目が、蔑みから恐怖に変わった頃、とうとう俺の魔力濃度は、両親の魔法では誤魔化しきれなくなった。

 そして、そのことが村の人間に広く知れ渡るようになると、俺は早々に村のはずれに隔離された。

 両親は、俺を「化け物」と罵り去って行った。

 店へ行っても、何も売ってもらえない。買ってももらえない。だから村の外で狩りをして生活した。そこで魔物と遭遇している人を見つけ、助けたこともあったけど俺の魔法を見て「化け物」と恐れ去って行く。それに、高い魔力を持つ人間は俺を見るだけで恐怖し、逃げたり攻撃してきたりする。

 だから村の外に出ることはしなかった。ここを出てもっと酷い暮らしになるかもしれない。

 それなら今の酷さで我慢しているほうがいいから。