武闘大会当日。私は選手控室にて、皆を前に大きく頷く。
「頼りにしてるからね、皆!」
しかし、皆はとんでもなく悪そうな表情でこちらを見ていた。
例えるなら、いかにも何か企んでます、といった表情だ。
「ねえやめて、その笑顔本当にやめて!? 不安になるから! 何でそんな顔するの!? 人の気持ち考えて!? 任せてくださいって言って!」
「ええ、大丈夫ですよ、任せてください。店長は、ただあの場に立っているだけでいいんです。そうしたら、勝手に終わりますから」
カーネスがあやす様に私の肩を叩く。完全に立場が逆転している。
「そうよ、一瞬で終わってる。そうしてまたここに無傷で戻って来られるわ」
「安心してくれ、クロエの身は無傷だ。傷一つつけさせない」
「大丈夫ですよ、きっと楽しい時間を過ごせると思います」
周りを見ると、シェリーシャさんもギルダもローグさんも頷いている。でも、不安が拭えない。
「クロエ様、お時間です」
扉が叩かれた。もう時間だ。行かねば。私はしっかり予選敗退を決めて、決勝戦前に観客席で一儲けすることを考えながら試合の会場へと歩み出した。



