「さ、受け付けは……っと」
あれからしばらく歩いて、私たちは闘技場に辿り着いた。
早速受付に向かい、カウンターで対応しているおじさんに声をかける。
「すみません。直近の大会で、屋台の営業の許可を頂きたいのですが……」
総合カウンターに立つ、支配人と腕章をつけたおじさんに問いかける。するとおじさんは柔和な笑みを浮かべた。
「第6262回、聖女降臨記念魔法魔導具兼剣術混合武闘大会ですね。承知いたしました。この用紙に必要事項の記入をお願いいたします」
おじさんの差し出す紙に記名して、店員の名前や店についての詳細、いつからいつまで出店するかを記していく。
私の記入項目を見ながらおじさんは手持ちの書類に記入し、手元の水晶で照合を始める。私は魔力がないから仕組みが良く分からないけど、魔力がとんでもなく入っている水晶に、人間の戸籍や前科前歴がないか、食べ物や道具を作って売っていいかの許可を国からとっているかなどの情報を記憶させるらしい。
そして水晶はあらゆる地方の水晶とつながっており、昼夜問わず情報共有がされている。
たとえば今いる場所とは別の場所で誰かを殺し指名手配されるようになれば、こうして照合にかけた瞬間、「人殺しだ!」と、捕まる。
「おや」
記入していると、おじさんが眉間にしわを寄せた。私と水晶を交互に見ている。なんでだ。指名手配犯じゃないのに。
「どうしました?」
「クロエ様は、選手として参加登録がされているので、該当時間に出店することは出来ませんよ」
「……え?」
「こちらにしっかりとお名前が書かれていますから」
そう言って支配人が差し出した水晶には、私の顔、名前が浮かんでいる。そしてその上には、第6262回、聖女降臨記念魔法魔導具兼剣術混合武闘大会、選手登録済みと記されていた。



