「街だ、街についた!」

 ローグさんを雇い一週間。ようやく街にたどり着いた。本当にうれしい。ローグさんに「次の街で試しに働いてみて~」なんて言ったにもかかわらず街に辿り着けず、どうしようかと思っていた。これで営業が出来る。でもとりあえず市場かどこかへ行って生活用品とかを買いそろえないと。

 そう決意して街の中心に向かって歩いて行くと、立派な闘技場がそびえ立っていた。

 景観になかなか自信がなかったり、観光名所として勧めづらい土地では、闘技場を建てて定期的に大会を開き町おこしをする。けれど、この闘技場は歴史を感じるし、何より大きい。経営のためではなく、もともとあったものを闘技場にした気がする。

「大きい……」
「へへ」

 カーネスが暗く笑う。絶対に今、変なことを考えていた。

「なに」
「いや、言われたいなと思って」
「カーネス大きくないじゃん。小さい」
「あ……それもいいですね」

 どうしよう、ローグさんという正気な従業員が仮加入したからか、もともと正気じゃなかった従業員ととうとう意思疎通が取れなくなった。

「闘技場か……近々、大会があるみたいだな」

 ギルダが言う。これだけ大きいのだから闘技場の周りで商売をすれば儲かるに違いない。

「あら、殺し合いの大会?」
「シェリーシャさん違います。一対一で魔法を使って戦っていき、一番強い人を決めるんです。観客もいると思うので……お店が出せたらいいんですけど……」

 私はそばにあった張り紙を示す。

「なら、これから闘技場に行ってみませんか? 出店の許可をとりに」

 ローグさんが言う。そうだ。お店を出すには出店許可が必要だ。

「そうですね、行きましょう」

 私の言葉にローグさんが続く。そうして私たちはコロシアムへと歩みを進めた。