そう、意気込んだはいいものの、何をしようか。
わたしは空中に浮かんで移動していた。
あれから、一週間が経ち、わたしのお葬式は
終わっていた。
花屋を見つけた。
お母さんに花を買う?
いや、わたしの姿は見えないし、
お金も持っていない。
それに空中に花束が浮かんでいたらホラーだ。
「うーん」
わたしは唸り声を上げる。
ケーキを買う?
いやいや、食べれないでしょ、幽霊なんだし。
それにお金もいるじゃん。
はぁ。幽霊ってあんまりできることないんだ……
落ち込んでいると、脳裏にある人の姿が
思い浮かんだ。
そうだ、あの人に会いに行こう。
胸が弾む。
わたしはワクワクしながらあの人の元へ向かった。
◯◯◯
学校の窓から侵入し、文芸部の教室に入った。
パソコンで何かを書いている綺麗な男子。
わたしの初恋の相手、理人くんだ。
彼は、小説を書くのが好きで、将来は小説家になりたいと言っていた。
わたしも少しは小説を書いていたけど
オチがつけられなくて永遠の未完となっている。
死んだというのに胸の鼓動を感じる。
まだ生きているんじゃないかと錯覚するくらい
心臓がバクバク鳴っている。
物語の創作に熱中している彼の横に座り、
横顔を眺める。
相変わらず、カッコいい。
いつも、優しい彼と話すうちに
わたしはどんどん彼に惹かれていったんだ。
わたしは死ぬ前に、理人くんに想いを伝えていた。
想いを伝えないまま死ぬのは嫌だったから。
わたしが生きていたら彼はなんと答えただろう。
わたしと同じ気持ちだっただろうか。
それとも友達以上には見てくれなかっただろうか。
理人くんが疲れたのか伸びをする。
すると、パチリと目が合った。
「え?」「え?」
「美花ちゃん?」
理人くんが驚きの表情を浮かべる。
「えっ?わたしが視えるの??」
思わず口にすると、彼は頷いた。
「視えるよ!本当に美花ちゃん?死んじゃったはずじゃ……」
動揺する理人くん。
無理もない。死んだはずの友達が現れたのだから。
「わたし、幽霊になったの」
そう告げると彼はわたしを見つめたまま固まった。
「そ、そんなこと本当にあるんだね……」
そしてわたしを抱きしめる。
突然のことに体がこわばった。
「もう一度、会えるなんて夢みたいだ」
涙声の理人くん。
誰か見ている人がいるのではないかと焦ったが、
幸い、この教室には理人くんとわたし
しかいなかった。
わたしも理人くんを抱きしめ返す。
肌の温もりが心地良かった。

