ぼくらは群青を探している

 雲雀くんが冗談を言うイメージはなかったので反応に困った。銀髪で赤色のヘアピンをしてズタズタといっていいほど耳に穴が開いているのは、果たしてどこにでもいる高校生なのだろうか。でも確かに、世の高校生のサンプルを無作為に拾って並べて比べたわけでもないのに「どこにでもいる」を観念するのは非論理的だ。

「……三国はどこにいてもどこにでもいる高校生っぽいな」

 それならよかった――と答える前にピコンと私の携帯電話に新着メールが届いた。桜井くんが「ヒマ」とまた送ってきている。雲雀くんと一緒に視線を向けると、一人で座り込んだ桜井くんは拗ねたように携帯電話をじっと眺めていた。

「アイツ、人のケータイだからって適当なメールばっか……」
「なんかこれが雲雀くんの送信済みメールに入るんだって思うと笑っちゃう」

 絵文字でも使い始めたらもう雲雀くんのキャラ崩壊どころじゃないのだけれど、残念ながら桜井くんはまだ文字を打つ以上には使いこなせないだろう。雲雀くんからの絵文字付きメールは受け取れなさそうだ。

「……三国ってメールとかすんの」
「あんまりしないよ」

 おそらく、大してメールが溜まっていない受信メールボックスを見ていたからだろう、雲雀くんの声は疑問形なのに「しないんだろ」と言っていた。

「池田とかメールしそうじゃん」
「陽菜はね。でも私があんまり返さないから」
「女子ってそういうの返さないといけないんじゃねーの」
「陽菜はいいの。私が返さないって分かってるから」
「ふーん。仲良いな」

 また新着メールが届いた。メールを開くと「 (ヒДマ`)」と書いてあったので思わず吹き出した。雲雀くんも思わず笑い出したくなりつつ、でも悔しいので(こら)えるような表情をしていた。

「器用すぎ」
「……顔文字だけ玄人(くろうと)かよ」
「顔が目に浮かんじゃう。目がヒマになってる桜井くん」

 そういえば受信するばかりで返信すらしていなかった、と返信ボタンを押そうとすると、雲雀くんの手に止められた。驚いて顔を上げたけれど、その視線の先の桜井くんを見て理由が分かった。誰かに声をかけられている。

「……あれ美人局?」
「いや、2人組だから違うと思う。能勢さんが聞いてたのは全部1人だった」

 ちょっと貸して、と雲雀くんに手を差し出されて携帯電話を渡すと、物凄いスピードで文字を打って桜井くんに「美人局じゃないからあしらえ」とメールを送った。

「さんきゅ」
「……雲雀くん、文字打つの速いね。女子高生の私も形無(かたな)しだよ」
「形無しって言う女子高生いねーからな」
「……なんか意地悪言われた気がするんだけど気のせい?」
「気のせいだろ。三国、全体的に遣う言葉が文語っぽい」

 やっぱり意地悪を言われている気がする……。「ど……どのあたりが……」「形無しとか」やっぱり意地悪だった。

「池田とか昴夜と会話が成立してんのが不思議なレベルだよな」
「……確かに陽菜は擬態語とか擬音語が多いかも」

 桜井くんはどうだっけ……と美人局ではない2人組の女子に声をかけられる様子を観察しながら日々の会話を思い出す。陽菜ほど擬態語や擬音語が多いイメージはない代わりに、どことなく子供っぽい喋り方な気はするのだけれど、それはきっと雲雀くんの喋り方が落ち着いているという相対的な問題だろう。

「……桜井くんって、こう、親戚の小さい子が騒いでるイメージだよね」
「……なんとなく思ってはいたけど、やっぱ三国アイツのこと馬鹿にしてんな」