ぼくらは群青を探している

「確かに俺は押し倒しましたけどそれ以上何もしてないです。俺は服の上から肩押さえただけなんで。昴夜は服の中に手突っ込みましたけど」
「ほお」
「待って、突っ込まれてません」
「突っ込んでないじゃん! ちょっとティシャツ捲っただけじゃん!」
「いや普通に触ってたと思う」
「ちょっとね、ちょっとだけね! 三国が信頼してるから~とか言うからもう本当に三国なにも分かってないんじゃないかと思って!」
「AVつけた時点で分かりはしただろ」
「なに、君ら3人で観賞会でもしたの」
「してないです!」桜井くんが大声で「侑生が三国押し倒してテレビつけて『こういうことすんだよ分かったか』って言っただけです!」

 桜井くんのセリフに、蛍さんはまじまじと雲雀くんを見た。信じられないものでも見るような目つきだ。

「……お前マジでそれで手出さなかったのか。なんか見る目変わった、偉いな」
「最初からそう言ってるじゃないですか」

 最早2人がどんな顔をしているか想像もできなかったけれど、少なくとも何が起こったのかを赤裸々に話されて恥ずかしかった。顔から火が出るとはこのことだ。

「つかまあ全体的にマジでバカな三国が悪いです」
「私のせい……?」
「ラブホ知らねーのはマジで非常識」
「だ、だって使ったことないし……見たこともないし……雲雀くん達こそなんで知っ──」
「つか蛍さん聞いてください」雲雀くんは私の言葉をガン無視して「三国、ラブホのことなんだって言ったと思います? バブル期に低予算で建てられたせいで天井が低くて窓がない欠陥ホテル、そして欠陥=ゼロ=ラブでラブホテルですよ」
「…………」

 蛍さんはぱちぱちと何度か瞬きした。隣の能勢さんはぶっと吹き出したかと思うとヒイヒイ言いながらおなかを抱えて笑い始めた。

「……三国お前マジでバカか?」
「……確かに私は頭は悪いですが」
「頭が悪いとかじゃねーよバカだよ! 欠陥がラブってなんだふざけてんのか!」
「だ、だってなんか普通にお風呂とか豪華でしたし、ベッドも大きいし、普通のホテルとの相違点を探せと言われると天井の低さと窓がないことくらいしか……あ、でもお風呂の豪華さのわりにシャンデリアとか妙に安っぽくてやっぱりそこも予算配分がおかしいとすれば筋が通るところではあって」
「…………」

 蛍さんは深い溜息を吐いた。私の被害妄想でなければ、おそらく、ここからなんと言って私を叱るべきか考えている。でも私の思考が間違っていたことは既に雲雀くんにも桜井くんにも指摘された後だし、ここで更に蛍さんに叱られることはないはずだ。……多分。

「……まあこればっかりは三国が社会勉強不足だからしゃーない」
「ほーらね」
「俺達が教えなかったらちょっと休憩とか言って男に連れ込まれてそう」
「そんなに頭悪くないから」
「いーーーやお前は桜井並みにバカだ自覚しろ」
「なんで蛍さんまで俺と並べるの」
「いやいや、いいよ、三国ちゃんはしっかりそのままピュアでいな。(よご)すのも醍醐味(だいごみ)だから」
「おい芳喜」
「ははは、冗談です」
「もう三国はいい」なんなら蛍さんは(さじ)を投げ「桜井、お前がおとりやるの今日か?」
「そうですよー。もう緊張しっぱなし、やだ」
「しまりのない顔して何言ってんだ」
「で、三国ちゃんと雲雀くんがビデオ撮るの? 楽しそうだねえ」

 能勢さんはセリフのとおり笑っている。さっきから笑い過ぎてもう涙目だ。

「いいなー、俺も行きたいな」
「お前は雲雀の女装服用意してろ」