ぼくらは群青を探している

 うーん、と4人は腕を組んで考え込んだ。誰を生贄(いけにえ)に捧げるかはそっちで考えてくれ、と私はペンを手に取ってノートの中に今までの情報を整理する。私達が手に入れられる証拠と、それが何を弾劾(だんがい)することができるか──。

「……三国に男装させればいんじゃね?」

 そして、桜井くんがとんでもない爆弾を落とした。

 一瞬、自分が呼ばれたのか分からなかった。そのくらい唐突過ぎる人選だった。

「……えっ?」
「……確かに、最悪触っても女だって言えば犯罪にならないんじゃね? それどうなんだ?」
「知りませんよそんなこと!」

 まるで名案であるかのように話に乗ろうとした蛍さんに思わず大声を出してしまった。

「別に男女関係ないらしいですよ」と携帯電話でカチカチ調べていた雲雀くんから助け舟が出された。

「じゃあ私じゃなくてもよくない!?」
「でもほら、蛍さんは顔バレしてるし、侑生は狙われにくそうだし。三国がやったほうが慣れてない感じ出ていんじゃね」
「慣──」

 慣れてないどころか分からないんですけどと答えかけてぐっと続く言葉を飲み込んだ。そんなことをこんなところで言えるはずがない。

「まあ、昴夜の言うとおりかもな。つか慣れてないとかなんとかいえば向こうが脱がせてくれるんじゃね」
「だからなんで私がやる前提なの!」
「俺は顔バレ、雲雀は警戒されやすくて、昴夜は顔に出るし、なんなら多分コイツは臨機応変にできない」
「私だってそんなの無理ですよ!」
「新庄の前で俺に電話かけたやつがよく言うよなあ?」
「あれは電話かけただけで演技とか要らないんで!」

 このままだと本当に私がおとりをさせられることになってしまう。ぶんぶんと首を横に振るけれど、蛍さんは「実際適任は三国しかいねーかもなあ」と群青のメンバーを思い浮かべるように腕を組んだ。

「つか、そもそも美人局って分かってれば手出さずにいられるかって言われたら、まあ大抵のヤツはなあ……」
()(ぜん)食わぬはなんとやらってね」
「据え膳つか毒皿だけどな」
「確かにぃ」
「しかもめっちゃ可愛いですからね!」
「テメェのせいでこうなってんだふざけてんじゃねぇ」
「すみません……」

 このままでは私がおとりをさせられる羽目になってしまう。誰か、誰かいないか、いやそうじゃない、このおとりになる適任はどんな人物かから考えよう。それか、私が不適切だという理由を考えよう。

 そういうことに慣れてないから不適切──いや逆だ、雲雀くんのいうとおり慣れてないほうが相手も警戒しないかもしれない。

 後々交渉役に出るから不適切──いややっぱりこれも逆だ、わざわざ証人をもう1人立てるよりも私自身が前に立ったほうがいい。

 他には、他には──。

「三国よお、お前言っただろ?」

 必死に逃げの手を探そうとする私に、蛍さんが次の手を打つ。

「群青の仲間になるのに覚悟が必要なら持つってな。お前の言葉には二言ありか?」

 ……安全圏にいないで、覚悟を持って群青の仲間を助けるために役に立てと。蛍さんはそう言いたいのだろう。

 ほら、陽菜、私が姫じゃないのは、こういうところだよ。私にテレパシーが使えたらいまそう伝えていた。でも同時に、私が望んだのもこういうところだよ、とも。

「……分かりました。やります」
「おー、さすが三国、カッコイー」
「言い出しっぺの桜井くんにしっかり手伝ってもらうことにします」
「あれ?」
「ま、お前と桜井、大して大して身長変わんねーだろ? 服貸してやれ」