「今回、颯人のバカがやらかしやがった。お前らマジでいい加減にしろ、声かけてくる女にろくなやつはいないつってんだろ。ナンパはすんな、ダセェから。で、ナンパはされんな、危ねぇから。分かったか?」

 うぃっすだかおうだかなんだか分からない野太い返事を聞きながら、私達だけが状況を理解できずに困惑し続ける。きっといまの私の頭上にはクエスチョンマークがたくさん浮かんでいるに違いない。

「……あの、蛍さん……一体なにが……」
「おい颯人、前出てきな」
「はいっ」

 蛍さんは石階段の上に座って頬杖をついたまま「さっきチラッと言ったけど、このバカがなぁ」と親指をその中津くんに向ける。

「他のチームの幹部の女に手出しやがった。それだけならただの喧嘩でいいんだけどな、その女が厄介で、颯人に無理矢理されただのなんだの(わめ)き始めたんだ。ここまで来れば分かるだろ、警察に駆け込まれたくなけりゃ金持ってこい、だ」

 トラブルのことは分かった。ただそのトラブルについて私がよろしくされる理由は分からなかった。

 頭の上にクエスチョンマークを浮かべたままの私に、蛍さんはそのまま続ける。

「で、いわく颯人に無理矢理されたから怖くて男と話せねー、女に金持ってこさせろってごねやがった。そういうわけで、三国、よろしくな」
「…………よ……ろ……?」
「俺達の代わりに(スノウ・)(ホワイト)の幹部の女に会ってこい。金持って行けなんてお使いさせるつもりはねえ、ぶちかましてこの話ポシャらせて来い」

 …………。

 つまり、中津くんが美人局(つつもたせ)に遭い、恐喝(きょうかつ)をされているので、その美人局をしている女に会って……恐喝話を握り潰してこい、と。

「……はい?」