もっと責められるのかと思っていたけれど、陽菜の中で雲雀くんと能勢さんの順位が入れ替わっただけだった。入れ替わったというか、能勢さんが乱入したことで自然に雲雀くんが降下した。
「で、で? なんで蛍さんに告白されてんの?」
「いやあれ冗談だし……」
「でも蛍さんが三国気に入ってんのは本当じゃん」
「桜井くん、余計なこと言わないで」
「ヒッ」
つい冷ややかな声を出してしまったせいか、桜井くんが縮み上がるふりをした。
「え、で、群青のメンバーって? 姫とは違うの?」
「……違うんじゃないかな。だって……」
だって、蛍さんも能勢さんも、私を誘った理由がありそうな口ぶりだった……。……そういえば、桜井くんと雲雀くんが群青に入って得するのは蛍さんだけじゃなくて能勢さんもか……。
「だって?」
「……だって、なんとなく、ね」
「お前はまたそうやってボーッとした返事ばっかしやがって。少しくらい考えろよ、危ないなー」
考えてはいるのだけれど、人前にはっきり出すほどの確固たる根拠や自信のある答えを出せていないのだ。
「つか、池田?」
「えっなに!」
雲雀くんが突然陽菜の苗字を呼ぶので陽菜が興奮で跳び上がった。
「池田って蛍さんのこととか知ってんの。東中だろ?」
「中学は違うけど、蛍さんって有名じゃん。普通知ってるんじゃない、英凜とかはボーッとしてるから知らなかったけど」
なんだか最近みんなに同じことを言われる気がする。雲雀くんも「ああ、なるほど」なんて頷いてるし、桜井くんのいうとおり私のことをボケーッとしてると思っているのだろう。
「能勢さんは?」
「能勢さんは2年エースだから」ぐっと陽菜は親指を立てながら「クソイケメンで高身長で色気ダダ漏れ、しかもめっちゃ頭いいからね! 2年特別科のトップ、能勢さんでしょ」
「いやそれは知らねーけど」
「なんか群青じゃなきゃ全然早稲に推薦できたのにみたいに言われて『いや僕は実力で入れるんで大丈夫です』って言ったらしいよ。カッコイー!」
雲雀くんは陽菜の勢いに押されてたじろいでいる。そりゃそうだ、男子が男子の魅力を語られても困る。
「……ていうか、陽菜、いつもそういう話ってどこで仕入れてくるの」
「いや普通にマジでお前が知らないだけでみんな知ってるから。あ、でも能勢さんの話はバスケで聞いた」
陽菜は女バスに入っていて、その結果男バスとも仲が良く、よく情報交換をするのだと言っていた。おそらくそれだ。
「……じゃ三国と蛍さんはマジで関係ねーんだな」
「あ、もう全然。蛍さんに会ったの、今日が初めてだし。普通に一目惚れなんじゃね、英凜可愛いし」
「理屈が分からないものを可能性として考慮するべきじゃないと思う」
「英凜、マジでそういうとこ直したほうがいいと思う」
私が群青にいることで利益になること……私を群青の監視下に置く理由ができること……? そんなの、ただのトートロジーだ。
考えても考えても、答えは出ない。
**
青海神社は、草木は適度に刈られているものの、手水もなく明かりもなくの古びた神社だった。
住所的には私の家から遠くないし、なんならギリギリ藍海区の隣にあるような気もした。ただ、住宅街の奥の奥にあって、見かけたことはあっても来たことはなかった。それこそ、青海神社なんて聞いてもピンとこなかったくらいだ。
その中にある社務所か休憩所みたいなものの1つの前に、蛍さんは横柄な態度で座り込んでいた。まるで自分が宮司か神主かみたいな態度だ。
「で、で? なんで蛍さんに告白されてんの?」
「いやあれ冗談だし……」
「でも蛍さんが三国気に入ってんのは本当じゃん」
「桜井くん、余計なこと言わないで」
「ヒッ」
つい冷ややかな声を出してしまったせいか、桜井くんが縮み上がるふりをした。
「え、で、群青のメンバーって? 姫とは違うの?」
「……違うんじゃないかな。だって……」
だって、蛍さんも能勢さんも、私を誘った理由がありそうな口ぶりだった……。……そういえば、桜井くんと雲雀くんが群青に入って得するのは蛍さんだけじゃなくて能勢さんもか……。
「だって?」
「……だって、なんとなく、ね」
「お前はまたそうやってボーッとした返事ばっかしやがって。少しくらい考えろよ、危ないなー」
考えてはいるのだけれど、人前にはっきり出すほどの確固たる根拠や自信のある答えを出せていないのだ。
「つか、池田?」
「えっなに!」
雲雀くんが突然陽菜の苗字を呼ぶので陽菜が興奮で跳び上がった。
「池田って蛍さんのこととか知ってんの。東中だろ?」
「中学は違うけど、蛍さんって有名じゃん。普通知ってるんじゃない、英凜とかはボーッとしてるから知らなかったけど」
なんだか最近みんなに同じことを言われる気がする。雲雀くんも「ああ、なるほど」なんて頷いてるし、桜井くんのいうとおり私のことをボケーッとしてると思っているのだろう。
「能勢さんは?」
「能勢さんは2年エースだから」ぐっと陽菜は親指を立てながら「クソイケメンで高身長で色気ダダ漏れ、しかもめっちゃ頭いいからね! 2年特別科のトップ、能勢さんでしょ」
「いやそれは知らねーけど」
「なんか群青じゃなきゃ全然早稲に推薦できたのにみたいに言われて『いや僕は実力で入れるんで大丈夫です』って言ったらしいよ。カッコイー!」
雲雀くんは陽菜の勢いに押されてたじろいでいる。そりゃそうだ、男子が男子の魅力を語られても困る。
「……ていうか、陽菜、いつもそういう話ってどこで仕入れてくるの」
「いや普通にマジでお前が知らないだけでみんな知ってるから。あ、でも能勢さんの話はバスケで聞いた」
陽菜は女バスに入っていて、その結果男バスとも仲が良く、よく情報交換をするのだと言っていた。おそらくそれだ。
「……じゃ三国と蛍さんはマジで関係ねーんだな」
「あ、もう全然。蛍さんに会ったの、今日が初めてだし。普通に一目惚れなんじゃね、英凜可愛いし」
「理屈が分からないものを可能性として考慮するべきじゃないと思う」
「英凜、マジでそういうとこ直したほうがいいと思う」
私が群青にいることで利益になること……私を群青の監視下に置く理由ができること……? そんなの、ただのトートロジーだ。
考えても考えても、答えは出ない。
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青海神社は、草木は適度に刈られているものの、手水もなく明かりもなくの古びた神社だった。
住所的には私の家から遠くないし、なんならギリギリ藍海区の隣にあるような気もした。ただ、住宅街の奥の奥にあって、見かけたことはあっても来たことはなかった。それこそ、青海神社なんて聞いてもピンとこなかったくらいだ。
その中にある社務所か休憩所みたいなものの1つの前に、蛍さんは横柄な態度で座り込んでいた。まるで自分が宮司か神主かみたいな態度だ。



