「おい桜井!」
昼休み、大声で2人の名前を呼びながら扉を開けたのは蛍さんだった。
灰桜高校で蛍さんを知らない人はいない。教室に残ってお昼を食べていた人の目は一斉に蛍さんに向いたし、当然のことながら教室内は水を打ったように静まり返った。ちなみに桜井くんは不在だった。
5組の金髪は桜井くんだけなので、蛍さんは一見して桜井くん(と、なんなら雲雀くん)がいないと気付いたらしい。その綺麗な眉を吊り上げて「おい、桜井いねーじゃねーか」とぼやくと、背後からひょいと能勢さんも顔を出した。
「あれま、本当だ。ね、桜井くんは?」
「えっ? お、俺?」桜井くんと全く話したこともない男子が、扉近くというだけで話しかけられ「いや知らないです……すみません……」とボソボソ答える。
「おい、三国いんじゃねーか」
そして当然、蛍さんは私に気が付く、と……。3年生の先輩なので、立ち上がって「……お久しぶりです」と軽く会釈した。蛍さんは能勢さんを連れて教室に入ってきて「お前みたいな礼儀正しさが桜井と雲雀にもあればな……」とどこか呆れた顔をした。
「や、三国ちゃん、久しぶり」
「……お久しぶりです」
そして能勢さんは今日もイケメンだ。陽菜は能勢さんに見惚れて硬直している。もうすぐそのお箸から卵焼きが落ちそう――いや落ちた。でも陽菜は能勢さんから視線を外さない。そっと周囲を見回したけれど、大体の女子は軒並み能勢さんに目を奪われていた。
「おい三国、桜井はどこだよ」
ただ、能勢さんみたいな色気がないとはいえ、蛍さんも負けず劣らずの綺麗な顔立ちだ。少し離れた席で「え……あの2人やばくない……?」「群青のトップ2でしょ……」と噂するのが聞こえた。
「……桜井くんと雲雀くんなら、いつもコンビニでパン買って、そのまま外で食べてますよ」
「チッ。あのなあ、桜井にケータイ買えって言っとけ! なるはやで!」
ああ、連絡がつかないのね……。この間も雲雀くんに待ちぼうけを食らわせる羽目になったことだし、確かに買ったほうがいいんじゃない、とは私自身も思っていた。
「でも雲雀くんと一緒にいるじゃないですか。雲雀くんに電話かければいるんじゃないですか?」
「面倒くせーだろ、なんでいちいち雲雀に連絡しないといけないんだよ」
「まあそれはそうですね」
「で、三国、今日集会すっから放課後あけときな」
……集会? 意味がよく分からずに首を傾げた。全校集会なら月1でやってるけど、蛍さんのいう集会とはなんだ。
まさか群青の集会? 眉を顰めただけで、能勢さんには私の思考が読めたのだろう、「永人さん、それじゃ三国ちゃんは分かんないですよ」とちょっと笑った。
「あのね、大体月に1回、集会やってるんだ。っていっても、やり始めたのは永人さんだけどね」
「……いや、そうだとして、何するんですか? 風紀検査するわけでもないのに……」
「んなことしたら、お前と芳喜以外は全員アウトだな。月1で報告会やってるってだけだ、1ヶ月も経てばどこが喧嘩売ってきただの、新しいチームができただの、なんか報告することはあるからな」
昼休み、大声で2人の名前を呼びながら扉を開けたのは蛍さんだった。
灰桜高校で蛍さんを知らない人はいない。教室に残ってお昼を食べていた人の目は一斉に蛍さんに向いたし、当然のことながら教室内は水を打ったように静まり返った。ちなみに桜井くんは不在だった。
5組の金髪は桜井くんだけなので、蛍さんは一見して桜井くん(と、なんなら雲雀くん)がいないと気付いたらしい。その綺麗な眉を吊り上げて「おい、桜井いねーじゃねーか」とぼやくと、背後からひょいと能勢さんも顔を出した。
「あれま、本当だ。ね、桜井くんは?」
「えっ? お、俺?」桜井くんと全く話したこともない男子が、扉近くというだけで話しかけられ「いや知らないです……すみません……」とボソボソ答える。
「おい、三国いんじゃねーか」
そして当然、蛍さんは私に気が付く、と……。3年生の先輩なので、立ち上がって「……お久しぶりです」と軽く会釈した。蛍さんは能勢さんを連れて教室に入ってきて「お前みたいな礼儀正しさが桜井と雲雀にもあればな……」とどこか呆れた顔をした。
「や、三国ちゃん、久しぶり」
「……お久しぶりです」
そして能勢さんは今日もイケメンだ。陽菜は能勢さんに見惚れて硬直している。もうすぐそのお箸から卵焼きが落ちそう――いや落ちた。でも陽菜は能勢さんから視線を外さない。そっと周囲を見回したけれど、大体の女子は軒並み能勢さんに目を奪われていた。
「おい三国、桜井はどこだよ」
ただ、能勢さんみたいな色気がないとはいえ、蛍さんも負けず劣らずの綺麗な顔立ちだ。少し離れた席で「え……あの2人やばくない……?」「群青のトップ2でしょ……」と噂するのが聞こえた。
「……桜井くんと雲雀くんなら、いつもコンビニでパン買って、そのまま外で食べてますよ」
「チッ。あのなあ、桜井にケータイ買えって言っとけ! なるはやで!」
ああ、連絡がつかないのね……。この間も雲雀くんに待ちぼうけを食らわせる羽目になったことだし、確かに買ったほうがいいんじゃない、とは私自身も思っていた。
「でも雲雀くんと一緒にいるじゃないですか。雲雀くんに電話かければいるんじゃないですか?」
「面倒くせーだろ、なんでいちいち雲雀に連絡しないといけないんだよ」
「まあそれはそうですね」
「で、三国、今日集会すっから放課後あけときな」
……集会? 意味がよく分からずに首を傾げた。全校集会なら月1でやってるけど、蛍さんのいう集会とはなんだ。
まさか群青の集会? 眉を顰めただけで、能勢さんには私の思考が読めたのだろう、「永人さん、それじゃ三国ちゃんは分かんないですよ」とちょっと笑った。
「あのね、大体月に1回、集会やってるんだ。っていっても、やり始めたのは永人さんだけどね」
「……いや、そうだとして、何するんですか? 風紀検査するわけでもないのに……」
「んなことしたら、お前と芳喜以外は全員アウトだな。月1で報告会やってるってだけだ、1ヶ月も経てばどこが喧嘩売ってきただの、新しいチームができただの、なんか報告することはあるからな」



