「……体育祭のときにも話しましたけど、雲雀くんのことは友達としてすごく好きですし……その、比べるのは良くないかもしれないですけど、笹部くんと違って、こう、異性として見れますし……」
「だから、それは好きになれそうな理由でしょ? 誰のことも好きじゃないならそれでいいんじゃない」
まるで、そのアドバイスをした当時、能勢さん自身も私の感情に気付いていなかったかのような言い方だった。
「でも、三国ちゃんは桜井くんのことが好きだって気付いちゃったんでしょ?」
でも、そんな言い方をされると、気付いていなかったのは私だけのように思えた。
「別の誰かを好きになれるの? 三国ちゃんってそんなに器用なの?」
「……私、自分で言うのもなんですけど、わりと理性的なタイプだと思っているので」
「理性的っていうか、理性しかないって感じだよね」
……悪口か罵倒にしか聞こえなかった。いや、きっとこの文脈ではそのとおりだろう。
「三国ちゃん、桜井くんを好きだって気付いてなかったにしても、雲雀くんと付き合わない選択をすればよかったのに。そうすれば後から桜井くんを好きだって気付いても困ることなんてなかったじゃない。たっぷり1週間もあって、なにをどう考えて雲雀くんと付き合うって決めたの?」
3週間前とは言っていることが違う。まるで私が本音を伏せていたせいでその程度のアドバイスしかできなかったと言わんばかりだった。能勢さんも雲雀くんと付き合うのがいいと思うよなんて言ったくせに――なんて、別に、最終的に決断をしたのは私だったから、能勢さんに責任を押し付けるつもりなんてないのだけれど。
「桜井くんのことを好きでいてもしょうがないって、どこかで分かってたんじゃない?」
桜井くんは、雲雀くんが私に告白したと聞いても「こうやって昼飯買いに行くときに俺と二人きりはやめろとかいい始めるんだったら困るよ」としか言わなかった。桜井くんにとって私と雲雀くんが付き合うことはその程度でしかなかった。
それでもって、桜井くんの隣にはいつでも胡桃がいる。今までずっと桜井くんの隣にいて、きっとこれからもずっと桜井くんの隣にいる。私はきっとずっと桜井くんの一番ではない。
能勢さんは煙草を咥えたまま腕を組み、だんまりの私に笑みを向ける。
「牧落ちゃんがいるから、自分が出てっても仕方がないって分かってたんじゃない? 三国ちゃんは理性的だからね」
……胡桃に劣等感を覚えたことはないけれど、桜井くんにとってずっと胡桃より下だという認識があることは否定できなかった。
能勢さんはゆらゆらと煙草を揺らしながら「ま、大抵の女の子があれ見たら諦めるんじゃない? その意味で、やっぱり三国ちゃんの選択は間違ってないよ」と、私を理性的だと言う。
「俺は頭の弱い子は嫌いだけど、そこは人それぞれだし、自分より頭の良い子はヤダなんて男は馬鹿ほど多いだろうし。特に灰桜高校なんて男もみんな頭弱いからさ、そりゃ三国ちゃんはモテないよね」
「……いま私を貶す文脈でしたか……?」
「貶してなんかないんだよ、褒めてるんだよ。自分より頭の良い女の子は耐えられないなんて言うのはプライドの方向性を間違った男だけ。そんな低レベルな男たちには三国ちゃんはモテないだろうけど、それは別に三国ちゃんの評価を下げることじゃないんだよ。ただ、三国ちゃんは此処において自分がモテない限りでちゃんと自分を正しく評価してるって話」
「だから、それは好きになれそうな理由でしょ? 誰のことも好きじゃないならそれでいいんじゃない」
まるで、そのアドバイスをした当時、能勢さん自身も私の感情に気付いていなかったかのような言い方だった。
「でも、三国ちゃんは桜井くんのことが好きだって気付いちゃったんでしょ?」
でも、そんな言い方をされると、気付いていなかったのは私だけのように思えた。
「別の誰かを好きになれるの? 三国ちゃんってそんなに器用なの?」
「……私、自分で言うのもなんですけど、わりと理性的なタイプだと思っているので」
「理性的っていうか、理性しかないって感じだよね」
……悪口か罵倒にしか聞こえなかった。いや、きっとこの文脈ではそのとおりだろう。
「三国ちゃん、桜井くんを好きだって気付いてなかったにしても、雲雀くんと付き合わない選択をすればよかったのに。そうすれば後から桜井くんを好きだって気付いても困ることなんてなかったじゃない。たっぷり1週間もあって、なにをどう考えて雲雀くんと付き合うって決めたの?」
3週間前とは言っていることが違う。まるで私が本音を伏せていたせいでその程度のアドバイスしかできなかったと言わんばかりだった。能勢さんも雲雀くんと付き合うのがいいと思うよなんて言ったくせに――なんて、別に、最終的に決断をしたのは私だったから、能勢さんに責任を押し付けるつもりなんてないのだけれど。
「桜井くんのことを好きでいてもしょうがないって、どこかで分かってたんじゃない?」
桜井くんは、雲雀くんが私に告白したと聞いても「こうやって昼飯買いに行くときに俺と二人きりはやめろとかいい始めるんだったら困るよ」としか言わなかった。桜井くんにとって私と雲雀くんが付き合うことはその程度でしかなかった。
それでもって、桜井くんの隣にはいつでも胡桃がいる。今までずっと桜井くんの隣にいて、きっとこれからもずっと桜井くんの隣にいる。私はきっとずっと桜井くんの一番ではない。
能勢さんは煙草を咥えたまま腕を組み、だんまりの私に笑みを向ける。
「牧落ちゃんがいるから、自分が出てっても仕方がないって分かってたんじゃない? 三国ちゃんは理性的だからね」
……胡桃に劣等感を覚えたことはないけれど、桜井くんにとってずっと胡桃より下だという認識があることは否定できなかった。
能勢さんはゆらゆらと煙草を揺らしながら「ま、大抵の女の子があれ見たら諦めるんじゃない? その意味で、やっぱり三国ちゃんの選択は間違ってないよ」と、私を理性的だと言う。
「俺は頭の弱い子は嫌いだけど、そこは人それぞれだし、自分より頭の良い子はヤダなんて男は馬鹿ほど多いだろうし。特に灰桜高校なんて男もみんな頭弱いからさ、そりゃ三国ちゃんはモテないよね」
「……いま私を貶す文脈でしたか……?」
「貶してなんかないんだよ、褒めてるんだよ。自分より頭の良い女の子は耐えられないなんて言うのはプライドの方向性を間違った男だけ。そんな低レベルな男たちには三国ちゃんはモテないだろうけど、それは別に三国ちゃんの評価を下げることじゃないんだよ。ただ、三国ちゃんは此処において自分がモテない限りでちゃんと自分を正しく評価してるって話」



