でも、そうだとしてなんで引き返したのだろう。私達が改札に入ってしまっていたから? ……でも今の時間から逆算すると、多分改札に入るより前にメールをしたはずだ。
「見つけられなかったのかな。桜井くんの家から一本なのに」
雲雀くんは無言だった。もしかして私が見つけていない答えを見つけたのだろうか。顔を見上げて促すけれど、何も言ってくれなかった。
中央駅に差し掛かってお互いに逆方向の東西線に乗り換えるとき「誕プレ、気使わせて悪かったな」とピアスについて少しニュアンスの違うことを言われた。
「気を使うって」
「付き合って2週間後に誕生日って詐欺っぽくね」
「詐欺じゃないでしょ」
言わんとしてることは分かるけど、その謙虚さが不遜な雲雀くんらしくなくて笑ってしまった。でも雲雀くんはあまり表情を変えない。お陰で私も笑みを引っ込める羽目になった。
「……ほら、告白のタイミングは外的要因に左右されちゃったわけだから、雲雀くんにそういう意図がないのは分かるわけだし……」
「……つかお試し期間なんだから、わざわざ本当の彼女みたいなことしなくていいって言うか悩んでたんだよな。言ったら言ったでやりそうだから黙ってたけど」
「……だから、お試し期間って言うのはやめようって話したじゃん?」
「……なんでそれに拘ってんだっけ」
逆に、どうして雲雀くんはお試し期間であることに拘るのだろう。それにはまるで、私達が形式上の彼氏と彼女であることを忘れまいとするような、名ばかりの関係にかこつけて友達以上に踏み込むのを防ごうとしているような……、私に逃げ場を残そうとしているような、そんな違和感があった。
「……なんか私が雲雀くんを好きになれるか試してるみたいだし……、それは好きじゃないって前提だから、その方向で認識を操作されそう、っていう……」
「……俺を好きになりたいってこと?」
それはどこかむず痒い、恥ずかしいセリフであるはずなのに、雲雀くんの表情に照れくささはなかった。少なくとも私から見れば、どこか自嘲気味に見えた。
「……そう、です」
「……別に、現に好きじゃないことには変わりないからいいだろ?」
……なんでそんな拗ねたような言い方をするのだろう。今日の私は、雲雀くんとの関係を何か間違えただろうか。
「……でも、それは気付いてないだけかもしれないって」
「三国は、俺を好きじゃないよ」
拗ねている。きっと雲雀くんは拗ねている。それで間違いない。あまりにも静かな落ち着いた声に惑わされそうになるけれど、わざわざそんなことを指摘する雲雀くんは、拗ねている。
「三国は、俺を好きじゃない」
それこそ、まるで認識を操作されてしまいそうなほど、確信めいた声音だった。
「……どうしてそう思うの」
「……三国は、俺がどこで何して何を思ってても気にならないだろ」
……ペットか何かの話だろうか。そう思えてしまうほど突飛のない話というか、想像しようにもできない話というか、少なくとも馴染のない感覚だった。
「俺は、気になるよ」
雲雀くんは、溜息と共に言葉を吐き出した。
「結局俺の言うことは聞かずに紅鳶神社に行って、昴夜と一緒にいて、蛍さんに送ってもらって……。一緒にいる間、どんなことを話したのか、どんな顔をしてたのか、どんな風に思ってたのか……」
……桜井くんにも、そうやって怒られた。どうして雲雀くんの言葉を聞き入れなかったのか、雲雀くんは私を好きなのに、と。
雲雀くんが私を好きだと、本当に分かってるのかと。
「見つけられなかったのかな。桜井くんの家から一本なのに」
雲雀くんは無言だった。もしかして私が見つけていない答えを見つけたのだろうか。顔を見上げて促すけれど、何も言ってくれなかった。
中央駅に差し掛かってお互いに逆方向の東西線に乗り換えるとき「誕プレ、気使わせて悪かったな」とピアスについて少しニュアンスの違うことを言われた。
「気を使うって」
「付き合って2週間後に誕生日って詐欺っぽくね」
「詐欺じゃないでしょ」
言わんとしてることは分かるけど、その謙虚さが不遜な雲雀くんらしくなくて笑ってしまった。でも雲雀くんはあまり表情を変えない。お陰で私も笑みを引っ込める羽目になった。
「……ほら、告白のタイミングは外的要因に左右されちゃったわけだから、雲雀くんにそういう意図がないのは分かるわけだし……」
「……つかお試し期間なんだから、わざわざ本当の彼女みたいなことしなくていいって言うか悩んでたんだよな。言ったら言ったでやりそうだから黙ってたけど」
「……だから、お試し期間って言うのはやめようって話したじゃん?」
「……なんでそれに拘ってんだっけ」
逆に、どうして雲雀くんはお試し期間であることに拘るのだろう。それにはまるで、私達が形式上の彼氏と彼女であることを忘れまいとするような、名ばかりの関係にかこつけて友達以上に踏み込むのを防ごうとしているような……、私に逃げ場を残そうとしているような、そんな違和感があった。
「……なんか私が雲雀くんを好きになれるか試してるみたいだし……、それは好きじゃないって前提だから、その方向で認識を操作されそう、っていう……」
「……俺を好きになりたいってこと?」
それはどこかむず痒い、恥ずかしいセリフであるはずなのに、雲雀くんの表情に照れくささはなかった。少なくとも私から見れば、どこか自嘲気味に見えた。
「……そう、です」
「……別に、現に好きじゃないことには変わりないからいいだろ?」
……なんでそんな拗ねたような言い方をするのだろう。今日の私は、雲雀くんとの関係を何か間違えただろうか。
「……でも、それは気付いてないだけかもしれないって」
「三国は、俺を好きじゃないよ」
拗ねている。きっと雲雀くんは拗ねている。それで間違いない。あまりにも静かな落ち着いた声に惑わされそうになるけれど、わざわざそんなことを指摘する雲雀くんは、拗ねている。
「三国は、俺を好きじゃない」
それこそ、まるで認識を操作されてしまいそうなほど、確信めいた声音だった。
「……どうしてそう思うの」
「……三国は、俺がどこで何して何を思ってても気にならないだろ」
……ペットか何かの話だろうか。そう思えてしまうほど突飛のない話というか、想像しようにもできない話というか、少なくとも馴染のない感覚だった。
「俺は、気になるよ」
雲雀くんは、溜息と共に言葉を吐き出した。
「結局俺の言うことは聞かずに紅鳶神社に行って、昴夜と一緒にいて、蛍さんに送ってもらって……。一緒にいる間、どんなことを話したのか、どんな顔をしてたのか、どんな風に思ってたのか……」
……桜井くんにも、そうやって怒られた。どうして雲雀くんの言葉を聞き入れなかったのか、雲雀くんは私を好きなのに、と。
雲雀くんが私を好きだと、本当に分かってるのかと。



