「ど、どうぞ。あ、でもやっぱり帰ってからで。気に入らなかったらあれだし……」
撤回は聞き入れてもらえなかったらしく、雲雀くんは包み紙のテープ部分にカリカリと爪を立てる。クリーム色の小箱に入っているのはブルーのスタッズピアス(と言うらしい)、現時点の雲雀くんの耳に邪魔にならないものを選んだけれど、逆に雲雀くんの耳は派手なのでこんな地味なものはついていない。その意味で不安はある。
「……雲雀くんはあんまりこういうタイプはつけてないなって思ったんだけど、その、雲雀くん、多分シルバーとブルーが似合うし……、いやつけろって意味じゃないんだけど……」
しどろもどろと言い訳をしても、雲雀くんはあまり表情を変えなかった。……いや、注意深く見れば、やはりその口角が少し緩んでいた。
「……ありがとな。つけるよ」
頭に手が乗せられた。なでなで、なんて擬態語が聞こえてきそうな仕草だった。
「……どう、いたしまして」
良かった、機嫌が直った。そんなつもりで誕生日プレゼントを用意したわけじゃなかったけれど、雲雀くんが拗ねているのが少しでも解消されたのなら、それにこしたことはない。一石二鳥、なんて言ってはいけないけどそれに近い。
「……池田と選んだのか」
「な、なんで分かったの……」
「……三国がこういうものを選べる気がしない」
「私のことなんだと思ってるの?」
「アクセサリーって発想がなさそう、三国に」
……確かにネックレスのひとつも持っていないので反論はできなかった。歩き出しながら「……私服がティシャツ一択だからすることがないだけだよ」「制服でもつけてるヤツはいるだろ」「……何のために……?」「そういうところだよ」とまた貶された。陽菜にもよく飾りっけがないと指摘されるので、彼氏がいる身としてもう少し気を使ったほうがいいのかもしれない。
電車に乗って携帯電話を見ると、メールが入っていた。ほんの5分前にきたメールで「鍵忘れてない?」と、(おそらく)桜井くんの手のひら上にキーホルダー付きの鍵が載っている写真付きで送られてきている。間違いなく私のだ。
「……家の鍵、桜井くんの家に忘れてきた」
「は?」
「あ、大丈夫、おばあちゃんいるし。普段、おばあちゃんが出かけてるときに私が出かけられるように持ってるだけだから」
被害妄想でなければ「馬鹿かコイツ?」なんて目を向けられた気がした。でも私もそこまで馬鹿ではない。
「明日、学校で返してもらうよ」
「……アイツももっと早く気付けばいいのにな」
「……確かに。忘れた私が悪いんだけど」
桜井くんの家を出て15分は経ってるのにな……。居間に落としていたんだろうし、すぐに見つかりそうなのに……。そんなことを考えながら、短く返事をして携帯電話を閉じる。
……閉じた後で、さっきの写真の違和感を覚えて、もう一度携帯電話を開いた。カチカチと写真を開いて、その違和感の正体に気が付く。
写真が全体的に暗い。多分家の中で撮った写真じゃない。桜井くんの手の後ろに写っているのも、ぼやけているとはいえ、きっとコンクリートの地面だ。……ということは、間違いなく外で撮った写真だ。
なんでわざわざ外で写真を──なんて考えるまでもなく分かった。
「……鍵、届けに来てくれてたのかな」
「……なんで?」
「……これ、家の中で撮った写真じゃなくない? 忘れたか聞くだけなら見つけたその場で──多分居間だっただろうから、居間で撮ればいいのに」
撤回は聞き入れてもらえなかったらしく、雲雀くんは包み紙のテープ部分にカリカリと爪を立てる。クリーム色の小箱に入っているのはブルーのスタッズピアス(と言うらしい)、現時点の雲雀くんの耳に邪魔にならないものを選んだけれど、逆に雲雀くんの耳は派手なのでこんな地味なものはついていない。その意味で不安はある。
「……雲雀くんはあんまりこういうタイプはつけてないなって思ったんだけど、その、雲雀くん、多分シルバーとブルーが似合うし……、いやつけろって意味じゃないんだけど……」
しどろもどろと言い訳をしても、雲雀くんはあまり表情を変えなかった。……いや、注意深く見れば、やはりその口角が少し緩んでいた。
「……ありがとな。つけるよ」
頭に手が乗せられた。なでなで、なんて擬態語が聞こえてきそうな仕草だった。
「……どう、いたしまして」
良かった、機嫌が直った。そんなつもりで誕生日プレゼントを用意したわけじゃなかったけれど、雲雀くんが拗ねているのが少しでも解消されたのなら、それにこしたことはない。一石二鳥、なんて言ってはいけないけどそれに近い。
「……池田と選んだのか」
「な、なんで分かったの……」
「……三国がこういうものを選べる気がしない」
「私のことなんだと思ってるの?」
「アクセサリーって発想がなさそう、三国に」
……確かにネックレスのひとつも持っていないので反論はできなかった。歩き出しながら「……私服がティシャツ一択だからすることがないだけだよ」「制服でもつけてるヤツはいるだろ」「……何のために……?」「そういうところだよ」とまた貶された。陽菜にもよく飾りっけがないと指摘されるので、彼氏がいる身としてもう少し気を使ったほうがいいのかもしれない。
電車に乗って携帯電話を見ると、メールが入っていた。ほんの5分前にきたメールで「鍵忘れてない?」と、(おそらく)桜井くんの手のひら上にキーホルダー付きの鍵が載っている写真付きで送られてきている。間違いなく私のだ。
「……家の鍵、桜井くんの家に忘れてきた」
「は?」
「あ、大丈夫、おばあちゃんいるし。普段、おばあちゃんが出かけてるときに私が出かけられるように持ってるだけだから」
被害妄想でなければ「馬鹿かコイツ?」なんて目を向けられた気がした。でも私もそこまで馬鹿ではない。
「明日、学校で返してもらうよ」
「……アイツももっと早く気付けばいいのにな」
「……確かに。忘れた私が悪いんだけど」
桜井くんの家を出て15分は経ってるのにな……。居間に落としていたんだろうし、すぐに見つかりそうなのに……。そんなことを考えながら、短く返事をして携帯電話を閉じる。
……閉じた後で、さっきの写真の違和感を覚えて、もう一度携帯電話を開いた。カチカチと写真を開いて、その違和感の正体に気が付く。
写真が全体的に暗い。多分家の中で撮った写真じゃない。桜井くんの手の後ろに写っているのも、ぼやけているとはいえ、きっとコンクリートの地面だ。……ということは、間違いなく外で撮った写真だ。
なんでわざわざ外で写真を──なんて考えるまでもなく分かった。
「……鍵、届けに来てくれてたのかな」
「……なんで?」
「……これ、家の中で撮った写真じゃなくない? 忘れたか聞くだけなら見つけたその場で──多分居間だっただろうから、居間で撮ればいいのに」



