「あー、分かる、付き合ってから呼び方変えるのってタイミング困るよね」
特に考えたことはなかったけれど、彼氏と彼女が何か特別だというのなら、雲雀くんの呼び方は変えるべきかもしれない。だから胡桃に相談できるのはありがたいといえばありがたかった。
「……胡桃はどういうタイミングで変えるの?」
「えー……あたしはわりと付き合う前から名前で呼んでるパターンが多いかも」
これが陰気な私と陽気な胡桃の違い……。名前で呼ぶ男子なんて従弟くらいだ。
「……でも、ほら、胡桃なら先輩と付き合ったりとかもするんじゃ」
「あー、うんうん、ある。先輩はね、結構『先輩』呼びが好きだからそのままなパターン多いかな」
前言撤回、胡桃への相談は何の成果ももたらしてくれなかった。そもそも私と胡桃では異性との距離感が違いすぎる。お陰で眉間に皺を寄せて唸る羽目になった。
「でも侑生と英凜はその距離感でいいのかもね。ほら、二人って大人っぽいし」
そういえば、胡桃はわりと初期から私のことも名前で呼んでたな……。異性に限らず同性でもこんなに違う……。これがコミュニケーション能力の差……。
「侑生は? 英凜のことまだ名前で呼ばないの?」
そしてケーキを運びながら、胡桃は淡々と雲雀くんをいじる、と……。雲雀くんは胡桃に対しては「別に」と短く返したけれど、荒神くんが「どうせ二人のときは名前で呼んでんだってー」と茶々を入れたら座布団を顔面に押し付けられていた。
桜井くんは「ちょっとだけ名前呼んでくれた日もあったのに……てかもしかしたら2回だけかもしんない……」とまだブツブツ言いながら座り込む。隣の胡桃がまるで女々しい生き物でも見るような視線を向けた。
「……別に名前くらいでそんなに騒がなくても」
「大事なの! 心の距離を感じるから!」
「はいはい、そういうのは英凜の彼氏になってから言ってください」
『三国ちゃんを好きなのは雲雀くんでしょ?』
……胡桃の言葉で、どうしてか能勢さんの言葉を思い出した。
「ていうかそうじゃん、侑生さえ英凜のこと名前呼びなのに、昴夜がしゃしゃり出てくるのってオジャマムシじゃない?」
「俺と侑生って対等じゃない?」
「え、昴夜のほうが下でしょ。侑生は彼氏なんだから」
「胡桃、帰る時間大丈夫?」
ここで桜井くんが「お試し期間だから対等」なんて言い始めてしまったら面倒なことになる。そう危惧して口走れば、胡桃は掛け時計を見て「あっやば! 昴夜ケーキ!」と桜井くんの腕を引っ張る。引っ張る……というより、強請るように腕にしがみついているというほうが正しかった。桜井くんは「はいはい」と仕方がなさそうにサクッとフォークをケーキに差し込み、そのまま胡桃に餌付けでもするような仕草で食べさせる。
「おいしー!」
……ああいうことは、私にはできないだろうな。というか、桜井くんと胡桃のほうがよっぽど……。
「てか胡桃ちゃんって誕生日いつなの?」
「あたしはねー、4月14日」
「え、近い近い。俺26日」
「英凜は? いつなの?」
「2月」
「早生まれなんだ。なんかそんな感じする」
早生まれっぽい、とは……。はて、と首を捻りながらケーキを口に運ぶ。久しぶりに食べるとおいしい。
「あ、そうだ、昴夜、誕生日ね」
胡桃は本当に一口で満足したらしく、さっさとカバンからプレゼントを取り出した。桜井くんはフォークを口に咥えたまま「んー」とぞんざいに受け取る。透明な袋にラッピングされた焼き菓子の詰め合わせだった。
特に考えたことはなかったけれど、彼氏と彼女が何か特別だというのなら、雲雀くんの呼び方は変えるべきかもしれない。だから胡桃に相談できるのはありがたいといえばありがたかった。
「……胡桃はどういうタイミングで変えるの?」
「えー……あたしはわりと付き合う前から名前で呼んでるパターンが多いかも」
これが陰気な私と陽気な胡桃の違い……。名前で呼ぶ男子なんて従弟くらいだ。
「……でも、ほら、胡桃なら先輩と付き合ったりとかもするんじゃ」
「あー、うんうん、ある。先輩はね、結構『先輩』呼びが好きだからそのままなパターン多いかな」
前言撤回、胡桃への相談は何の成果ももたらしてくれなかった。そもそも私と胡桃では異性との距離感が違いすぎる。お陰で眉間に皺を寄せて唸る羽目になった。
「でも侑生と英凜はその距離感でいいのかもね。ほら、二人って大人っぽいし」
そういえば、胡桃はわりと初期から私のことも名前で呼んでたな……。異性に限らず同性でもこんなに違う……。これがコミュニケーション能力の差……。
「侑生は? 英凜のことまだ名前で呼ばないの?」
そしてケーキを運びながら、胡桃は淡々と雲雀くんをいじる、と……。雲雀くんは胡桃に対しては「別に」と短く返したけれど、荒神くんが「どうせ二人のときは名前で呼んでんだってー」と茶々を入れたら座布団を顔面に押し付けられていた。
桜井くんは「ちょっとだけ名前呼んでくれた日もあったのに……てかもしかしたら2回だけかもしんない……」とまだブツブツ言いながら座り込む。隣の胡桃がまるで女々しい生き物でも見るような視線を向けた。
「……別に名前くらいでそんなに騒がなくても」
「大事なの! 心の距離を感じるから!」
「はいはい、そういうのは英凜の彼氏になってから言ってください」
『三国ちゃんを好きなのは雲雀くんでしょ?』
……胡桃の言葉で、どうしてか能勢さんの言葉を思い出した。
「ていうかそうじゃん、侑生さえ英凜のこと名前呼びなのに、昴夜がしゃしゃり出てくるのってオジャマムシじゃない?」
「俺と侑生って対等じゃない?」
「え、昴夜のほうが下でしょ。侑生は彼氏なんだから」
「胡桃、帰る時間大丈夫?」
ここで桜井くんが「お試し期間だから対等」なんて言い始めてしまったら面倒なことになる。そう危惧して口走れば、胡桃は掛け時計を見て「あっやば! 昴夜ケーキ!」と桜井くんの腕を引っ張る。引っ張る……というより、強請るように腕にしがみついているというほうが正しかった。桜井くんは「はいはい」と仕方がなさそうにサクッとフォークをケーキに差し込み、そのまま胡桃に餌付けでもするような仕草で食べさせる。
「おいしー!」
……ああいうことは、私にはできないだろうな。というか、桜井くんと胡桃のほうがよっぽど……。
「てか胡桃ちゃんって誕生日いつなの?」
「あたしはねー、4月14日」
「え、近い近い。俺26日」
「英凜は? いつなの?」
「2月」
「早生まれなんだ。なんかそんな感じする」
早生まれっぽい、とは……。はて、と首を捻りながらケーキを口に運ぶ。久しぶりに食べるとおいしい。
「あ、そうだ、昴夜、誕生日ね」
胡桃は本当に一口で満足したらしく、さっさとカバンからプレゼントを取り出した。桜井くんはフォークを口に咥えたまま「んー」とぞんざいに受け取る。透明な袋にラッピングされた焼き菓子の詰め合わせだった。



