ぼくらは群青を探している

 だから、「犯人はあなただ」なんて誰かを指さすことなんて、今の私にはできっこないのだ。ミステリー小説を書くにはあまりにも情報が足りないし、きっと私の行動力も足りていない。

「……でもそれは容疑者を絞れないってだけだろ。群青の先輩らが怪しいことには変わりない」
「そうなんだけど……なんだか、怪しいにしては先輩達の行動があんまりにも……」

 矛盾する、と言いかけて、それが言い訳じみていることに気が付いて一度閉口した。

 こんなふうに思考をこねくり回すのは、そしてそれを次々と雲雀くんと桜井くんに吐き出すのは、「お前の推論は間違ってる」と私の気付いていない穴を見つけてもらいたいからだ。

「……というか、端的に、私が先輩達を好きだから、あんまり疑いたくないだけ」

 私は犯人捜しをしたいんじゃない。どう考えたって疑う余地なく先輩達は|白だ(・・)と確信したいだけだ。

「中学生のとき、委員会とかで先輩との関わりはあったんだけど、そこで関わってた先輩のことはあんまり好きじゃなかったんだよね」
「なんかイヤなことされたのか」
「そういうわけじゃないんだけど……なんかやたら口うるさくて雑用させられた記憶しかないみたいな……」
「ああ、まあ、中学の先輩にありがちだな」
「群青の先輩は、先輩だからすることと後輩だからしてあげることがそれぞれちゃんとあって……対価関係があるっていうのかな、先輩のいいとこどりをしてないみたいな」

 上手く説明できなかったけれど、雲雀くんの表情が怪訝に変わることはなかった。むしろ「それはそうかもな」とすんなり頷いてくれた。

「それこそ(レイブン・)(クロウ)の件とか、3年がやるぞつってるから、俺らに拒否権はない。代わりに──それこそ俺と三国が黒烏の連中に侮辱されたってなったら、3年が『うちの後輩馬鹿にしてんじゃねえぞ』って出て行く」
「そう、そういう。私達は先輩に従わないといけないけど、代わりに先輩は私達を守ってくれる」

 雲雀くんが一番最初に話していた、群青は上意(じょうい)下達(かたつ)がしっかりしているということに関係する。あれはきっと群青の先輩達の関係性ありきで上手く機能していることだ。

 ただ、そういうのは、あくまで先輩達の好きなところの一つであって、結局ごちゃごちゃ理屈を連ねたって、ただ先輩達を好きだという感情以上に明快な答えはない。

「……だから、今までの推論に何の意味もなかったっていうのは、なーんだってがっかりしたところもあったけど、正直ちょっとホッとした」
「……そっか」

 微妙に納得しきっていなさそうな返事だった。仕方がない、だって群青の内部の誰かが(レイブン・)(クロウ)の2人組に対して陽菜に声をかけるよう仕向けたこと、その事実はきっと間違いないのだから。

「……まあでも、あんまり先輩と二人きりになるなよ」
「そうだね。二人きりになるのは九十三先輩くらいにしとく」
「あの人はあの人でマジでどこまで本気なのか分かんねーのがな……」
「10割冗談じゃないのかな」
「……だと思うけど1割本能混ざってる気がする」

 本能……。でも桜井くんの前ではパンツの話をしないってことは私の前でするのはわざとなんだろうし……。いやそもそも本能でパンツの話をしていたとしても意味が分からないけど……。