本当に機嫌悪かったんだ……。お水を飲みながらつい桜井くん達が来る前の能勢さんの様子を脳内で反芻した。その言動には普段の能勢さんからは考えられもしない横暴さを感じた気がしていたけれど、あれはやっぱり勘違いじゃなかった……。
「俺、全然分かりませんでしたけど。何がどう悪かったんですか?」
「アイツ、俺がいるときは煙草吸わねーんだよ」
……そういえば、蛍さんの前では後輩然としているんだと能勢さん自身が言っていた。雲雀くんは「へえ、さすがっすね」とその上下関係の意識に感心している。
「別に俺だって、臭わなけりゃ視界で吸うなとは言わねーよ。でもアイツは意外とそういうとこ気使うから吸わねーんだよな」
「で、アイツがどうしても煙草吸うのはイラついてるとき」
「……そういえば集会始まるまでも数えると3本吸ってました」
私と2人のときに1本、常盤先輩と1本、そして帰り際に1本……。苛立つと煙草が増えるんだという話は夏祭りのときもしていた。……それこそ夏祭りの日も、蛍さんがいるのに煙草に火をつけていたのは苛立っていたから、か。
九十三先輩も「あー、それ完璧に機嫌悪いね」と頷いた。
「ま、女と揉めたんじゃない? 日曜だし」
「日曜だとなんかあるんですか」
「デートしたいとかごねられたんじゃん? アイツマジで女癖悪いからね、ヤることヤって」そこで両耳が雲雀くんの両手に押さえつけられて「性欲満たしたらそれでオシマイ、彼女面なんてされたらマジでブチギレ」……後半がよく聞こえなかった。蛍さんがじろりと九十三先輩を睨みつける。
「……お前、三国の前で明け透けに話すんじゃねーよ」
「それより前に雲雀が三国ちゃんに触ってることを怒るべきじゃね?」
「んなわけねーだろ、臨機応変だ」
雲雀くんの両手が離れた。雲雀くんの手が温かいので、冷房で冷えている耳がちょっと温められて気持ちがよかった。
「……なにしてる三国」
「え。なんか耳が温まっていいなと」
その耳を手で触っていると、蛍さんの手の中でボキリと割り箸が折れた。
「……九十三は余計なこと喋るし、雲雀は公共の場でイチャつくし、マジでどうなってんだ」
「これは三国のためなんで」
「三国が満足そうに耳を触ってるのが問題なんだよ」
「……別に満足そうに触ってるわけじゃ」
「鏡見て言いな」
「……だって雲雀くんの手が温かかったので」
「手が温かいヤツって心が冷たいんじゃない? 雲雀と別れたほうがいいんじゃない?」
「ただの筋肉量の問題じゃないですか。男の手は大抵温かいもんだと思いますよ」
「じゃー俺の手のほうが温かいんじゃない? 三国ちゃんは今度から俺が温めてあげるね」
「俺よりアンタの言動のほうがよっぽどAAA超えてるし問題あるでしょ」
……桜井くんの手は温かいのかな。温かそうだな。私には関係のないことだけれど。
お店を出るとき、蛍さんと九十三先輩は「雲雀、三国送れよ」「帰り道だけは二人きりを許す!」「ただし親がいなければ家には上がるな」と言い含めて帰って行った。
「……雲雀くん、まだバスあるし、一人でいいよ」
「バス停から家は一人だろ。いいよ別に、暇だし、明日も休みなんだし」
雲雀くん一人なら駅までほんの数分歩いてそこから電車で一本で帰れるのに、私のせいで遠回りをさせることになるのは申し訳ない。というか、バス代も勿体ない。
「……歩くのとどっちがいい?」
「……三国がいいなら歩くか」
「俺、全然分かりませんでしたけど。何がどう悪かったんですか?」
「アイツ、俺がいるときは煙草吸わねーんだよ」
……そういえば、蛍さんの前では後輩然としているんだと能勢さん自身が言っていた。雲雀くんは「へえ、さすがっすね」とその上下関係の意識に感心している。
「別に俺だって、臭わなけりゃ視界で吸うなとは言わねーよ。でもアイツは意外とそういうとこ気使うから吸わねーんだよな」
「で、アイツがどうしても煙草吸うのはイラついてるとき」
「……そういえば集会始まるまでも数えると3本吸ってました」
私と2人のときに1本、常盤先輩と1本、そして帰り際に1本……。苛立つと煙草が増えるんだという話は夏祭りのときもしていた。……それこそ夏祭りの日も、蛍さんがいるのに煙草に火をつけていたのは苛立っていたから、か。
九十三先輩も「あー、それ完璧に機嫌悪いね」と頷いた。
「ま、女と揉めたんじゃない? 日曜だし」
「日曜だとなんかあるんですか」
「デートしたいとかごねられたんじゃん? アイツマジで女癖悪いからね、ヤることヤって」そこで両耳が雲雀くんの両手に押さえつけられて「性欲満たしたらそれでオシマイ、彼女面なんてされたらマジでブチギレ」……後半がよく聞こえなかった。蛍さんがじろりと九十三先輩を睨みつける。
「……お前、三国の前で明け透けに話すんじゃねーよ」
「それより前に雲雀が三国ちゃんに触ってることを怒るべきじゃね?」
「んなわけねーだろ、臨機応変だ」
雲雀くんの両手が離れた。雲雀くんの手が温かいので、冷房で冷えている耳がちょっと温められて気持ちがよかった。
「……なにしてる三国」
「え。なんか耳が温まっていいなと」
その耳を手で触っていると、蛍さんの手の中でボキリと割り箸が折れた。
「……九十三は余計なこと喋るし、雲雀は公共の場でイチャつくし、マジでどうなってんだ」
「これは三国のためなんで」
「三国が満足そうに耳を触ってるのが問題なんだよ」
「……別に満足そうに触ってるわけじゃ」
「鏡見て言いな」
「……だって雲雀くんの手が温かかったので」
「手が温かいヤツって心が冷たいんじゃない? 雲雀と別れたほうがいいんじゃない?」
「ただの筋肉量の問題じゃないですか。男の手は大抵温かいもんだと思いますよ」
「じゃー俺の手のほうが温かいんじゃない? 三国ちゃんは今度から俺が温めてあげるね」
「俺よりアンタの言動のほうがよっぽどAAA超えてるし問題あるでしょ」
……桜井くんの手は温かいのかな。温かそうだな。私には関係のないことだけれど。
お店を出るとき、蛍さんと九十三先輩は「雲雀、三国送れよ」「帰り道だけは二人きりを許す!」「ただし親がいなければ家には上がるな」と言い含めて帰って行った。
「……雲雀くん、まだバスあるし、一人でいいよ」
「バス停から家は一人だろ。いいよ別に、暇だし、明日も休みなんだし」
雲雀くん一人なら駅までほんの数分歩いてそこから電車で一本で帰れるのに、私のせいで遠回りをさせることになるのは申し訳ない。というか、バス代も勿体ない。
「……歩くのとどっちがいい?」
「……三国がいいなら歩くか」



