蛍さんの鶴の一声で群青の先輩達が一斉に雲雀くんにとびかかった。誇張表現ではない、本当に一斉にとびかかった。ガタガタッと椅子も机も倒れそうな勢いで揺れたし、隣に座っていた私は飛びのく羽目になったし、ターゲットの雲雀くんは椅子に座ったまま体を押さえつけられ、血判状に人差し指を無理矢理押し付けられた。ちなみに先輩達はなぜか朱肉を持っていた。よく見れば蓋には「職員室」と書かれたシールが貼ってあったので所有者は明白だった。そして雲雀くんが血判状に指印を押す瞬間を、能勢さんがパシャッとそのブルーの携帯電話で撮影した。
蛍さんは雲雀くんの指印が押された血判状を手に取って「よし、青海神社にでも飾っとくか」と満足げに頷く。嫌がらせが筋金入り過ぎる。
「さて、んじゃ真面目な話だが、今週末日曜日は集会を行うので青海神社に集合するように」
そしてくるくるとその紙を筒状に丸めながら平然と言い放つ。真面目な話もあったんだ……。
「……雲雀くんに指印を押させるために来たんじゃなかったんですね」
「指印ってなんだ」
「人差し指の印鑑ですよ」
人差し指を立ててその腹をみせると「お前本当に色んなこと知らねーのに色んなこと知ってんな」と多分ラブホを引き合いに出された。
「つか、そこまで暇じゃねーよ、俺達は受験生様だぞ」
集会をすると言った人が一体何を……。しかもそんないろんな色の頭の先輩達が集まってきて「受験生様」と名乗ったところで説得力の欠片もない。
「……そうだとして、日曜日にわざわざ集会なんて珍しいですね」
「俺は今日でもいいって話したんだけどさー」と九十三先輩がいえば「土日にセンター模試あっから俺は勉強すんだよ!」と蛍さんが苛立たし気に答えた。この人、不良なんてやめればいいのに……。
「てか集会って何? 何かあったの?」
「その話をするから集会すんだろ。雲雀、お前に関係ある話だからな」
雲雀くんは眉間に深い皺を作ったまま、丁寧に指をティッシュで拭いている。さすがにここまで全力でいじられるとちょっと不機嫌そうだ。
「返事は?」
「……分かりましたよ」
「よろしい。んじゃ日曜な」
絶対あの血判状のためだけに来たんだ……。先輩達は「これで三国ちゃんも安心だなー」なんて余計なお世話を口にしながら帰って行った。雲雀くんの眉間の皺は依然深い。
その先輩達が去ったことで危難も去ったと考えたのだろう、陽菜が先輩達の出て行った扉を見守りながら私の席の隣に戻ってきて「……相変わらず群青の先輩すげーな」と呟いた。
「……もう昨日からずっとあの調子だよ」
「マジか、ウケる。でもめっちゃ気持ち分かる、あたしだって昨日聞いてなかったら今日叫んでたと思う」
というか、現に、陽菜は聞いた瞬間に叫んでいた。昨日、焼肉に行く前に雲雀くんは桜井くん、私は陽菜に報告をし、桜井くんがどうだったかは知らないけれど陽菜はカフェで人目もはばからず「マジ!!」と叫んだ。その後のボリュームはさすがに平常に戻ったものの「なんて言ったの」「そんで雲雀はなんて答えたの」「え、その時の雲雀ってやっぱいつもどおりクールなの?」「あたしも照れてる雲雀見たいぃー」とすごい喚きようだった。逐一陽菜に感想を言われるたびに土曜日のことを反芻してしまって恥ずかしくて仕方がなかった。
蛍さんは雲雀くんの指印が押された血判状を手に取って「よし、青海神社にでも飾っとくか」と満足げに頷く。嫌がらせが筋金入り過ぎる。
「さて、んじゃ真面目な話だが、今週末日曜日は集会を行うので青海神社に集合するように」
そしてくるくるとその紙を筒状に丸めながら平然と言い放つ。真面目な話もあったんだ……。
「……雲雀くんに指印を押させるために来たんじゃなかったんですね」
「指印ってなんだ」
「人差し指の印鑑ですよ」
人差し指を立ててその腹をみせると「お前本当に色んなこと知らねーのに色んなこと知ってんな」と多分ラブホを引き合いに出された。
「つか、そこまで暇じゃねーよ、俺達は受験生様だぞ」
集会をすると言った人が一体何を……。しかもそんないろんな色の頭の先輩達が集まってきて「受験生様」と名乗ったところで説得力の欠片もない。
「……そうだとして、日曜日にわざわざ集会なんて珍しいですね」
「俺は今日でもいいって話したんだけどさー」と九十三先輩がいえば「土日にセンター模試あっから俺は勉強すんだよ!」と蛍さんが苛立たし気に答えた。この人、不良なんてやめればいいのに……。
「てか集会って何? 何かあったの?」
「その話をするから集会すんだろ。雲雀、お前に関係ある話だからな」
雲雀くんは眉間に深い皺を作ったまま、丁寧に指をティッシュで拭いている。さすがにここまで全力でいじられるとちょっと不機嫌そうだ。
「返事は?」
「……分かりましたよ」
「よろしい。んじゃ日曜な」
絶対あの血判状のためだけに来たんだ……。先輩達は「これで三国ちゃんも安心だなー」なんて余計なお世話を口にしながら帰って行った。雲雀くんの眉間の皺は依然深い。
その先輩達が去ったことで危難も去ったと考えたのだろう、陽菜が先輩達の出て行った扉を見守りながら私の席の隣に戻ってきて「……相変わらず群青の先輩すげーな」と呟いた。
「……もう昨日からずっとあの調子だよ」
「マジか、ウケる。でもめっちゃ気持ち分かる、あたしだって昨日聞いてなかったら今日叫んでたと思う」
というか、現に、陽菜は聞いた瞬間に叫んでいた。昨日、焼肉に行く前に雲雀くんは桜井くん、私は陽菜に報告をし、桜井くんがどうだったかは知らないけれど陽菜はカフェで人目もはばからず「マジ!!」と叫んだ。その後のボリュームはさすがに平常に戻ったものの「なんて言ったの」「そんで雲雀はなんて答えたの」「え、その時の雲雀ってやっぱいつもどおりクールなの?」「あたしも照れてる雲雀見たいぃー」とすごい喚きようだった。逐一陽菜に感想を言われるたびに土曜日のことを反芻してしまって恥ずかしくて仕方がなかった。



